嘔吐下痢症は聞いたことがなくても、ノロウイルスやロタウイルスならご存知かもしれませんね。
嘔吐下痢症・ノロウイルス・ロタウイルス・ウイルス感染症・胃腸炎・腸炎は、名称こそ異なりますがどれも同じです。
冬に流行し、「お腹の風邪」と呼ばれるのが嘔吐下痢症です。
下痢・嘔吐・発熱などの症状があるなら、もしかしたら嘔吐下痢症にかかっているのかもしれません。
本ページでは大人・子供・乳幼児ではどのような症状がでるのか、潜伏期間や治療などの特徴をご紹介します。
取るべき対策など、ぜひ参考になさってみてください。

嘔吐下痢症の発症原因

嘔吐下痢症は口から原因となるウイルスが侵入し、消化管で増殖して発症する病気です。
嘔吐下痢症の中でもノロウイルスが猛威を振るう時期は例年冬~5月くらいまでで、ピークは12月・1月になります。
ロタウイルスは1月くらいからスタートし、だいたい3月~5月にピークを迎えます。
ノロウイルスは大人も感染する一方で、ロタウイルスの患者さんの多くは乳幼児です。
特に年齢が生後6か月~2歳で初感染という場合は、悪化する傾向があります。

嘔吐下痢症の感染経路

嘔吐下痢症の感染経路は、指・手・食べ物などを介して口から侵入し発症します。
糞便(ふんべん)や嘔吐物などが付着した手を十分に洗浄できていない場合、ウイルスが付着したままドアノブを触ってしまえばそのドアノブが感染経路になってしまいます。
生のままや十分な加熱処理ができていない二枚貝を食べたとき、もし汚染されていたとすれば食中毒の原因になります。

嘔吐下痢症の潜伏期間

嘔吐下痢症は、非常に高い感染力を持っています。
ノロウイルスもロタウイルスも感染してから24時間~48時間の潜伏期間を過ぎると症状を発症します。
ノロウイルスは、患者さんによっては感染後12時間程度で症状がでることもあります。

嘔吐下痢症の症状

嘔吐下痢症は、ウイルスのうつる年齢層に応じた症状が現れます。

大人

ノロウイルスの代表的な症状は、病名にもなっている嘔吐・下痢です。
頻度が非常に多く、同じ日に10回以上を数える日もあるほどです。
患者さんによっては、さほど高くない熱症状・頭痛・腹痛なども生じます。
脱水症状に注意が必要で、同じ大人でも高齢になるほど気を付けてください。
考えられる合併症として腸重積(じゅうせき)・イレウス・腎症・脳症・けいれんなどがあげられます。

ロタウイルスは症状が現れ始めると下痢や嘔吐をするようになり、1日目の最初のみ白色の便をします。
脱水・腹痛・発熱を併発する患者さんもいますが、1週間程度で改善します。
合併症のリスクとして考えられるのは、ほとんどないのですが脳症とけいれんがあげられます。
また、軽い胃腸炎の嘔吐下痢症でも、けいれんが生じるケースもあります。
脳症の中でもロタウイルス脳症を起こす割合はインフルエンザ脳症・HHV-6・7脳症に続く多さです。
10%未満が死亡し、後遺症は38%というデータがあります。

乳幼児

突如嘔吐の症状を引き起こします。
嘔吐が2回~15回ほどあった後か同じくらいで、下痢の症状もでてきます。
病状がひどい場合にはお米のとぎ汁のような水様便がでて、通常でも白と黄色の中間のような色をした酸っぱいにおいの水っぽい排便があります。

発熱症状がでるケースもありますが、あったとしても基本的に38度ほどであまり上昇はしません。
乳幼児によっては、39度や40度の高熱になるケースもあります。

下痢症状は3回から20回未満ほどあり、中には1週間近くも続く患者さんもいます。
下痢や嘔吐を繰り返していると脱水症にかかりやすくなりますので、注意が必要です。
水分と一緒に消化液が頻繁に排出されていれば、塩分など体液に含まれている電解質(イオン)が少なくなっていくためです。

嘔吐下痢症の原因となるウイルスはいくつかの種類があるのですが、乳幼児の発症で多いのはノロウイルスとロタウイルス、特に症状が辛いのはロタウイルスとなります。
ノロウイルスとロタウイルス以外では、腸管アデノウイルスやアストロウイルスなどがあります。

子供

乳幼児より大きな子供になると、嘔吐下痢症の原因ウイルスがうつっても嘔吐の症状が5時間~12時間程度あるだけというケースが少なくありません。
嘔吐下痢症ですが、下痢症状があまりないのが特徴的です。
翌日には回復してしまいます。

出席停止になる?

学校・保育園・幼稚園に通っている子供が嘔吐下痢症にかかったら、出席停止になるのでしょうか。
一般的に、下痢の症状がでている間は出席停止が適しています。
ただ、しっかりとおむつのケアが可能でしたら、下痢症状があっても通園が可能です。
ウイルスが感染しないよう、適切な方法でおむつの処理を行うことが重要です。
おむつが必要なく自分でトイレに行けるようになっている子供は、通学・通園をしても問題ありません。
2週~3週間はウイルスが便に含まれていますから、作業を行うときには十分な手洗いを忘れないようにしてください。

嘔吐下痢症の治療方法

ノロウイルスもロタウイルスも治療方法は対症療法のみです。
ノロウイルスは臨床症状のみで診断できないことから、迅速診断キットというものが使用されます。
迅速診断キットとは、嘔吐下痢症の発症原因であるウイルスが便に入っていないかの検査が行えるツールです。
迅速診断キットの費用は年齢が3歳未満の乳幼児と65歳以上の方に限り、保険診療の対象となります。
医療機関の中には、迅速診断キットを使用していないところも少なくありません。
その理由は、もし検査で嘔吐下痢症だと正確な診断ができてもそうでなくても、対症療法しか治療方法の選択肢がないためです。

ロタウイルスの検査も、迅速診断キットを用いてウイルスが便に含まれていないかを調べます。
こちらの迅速診断キットは保険が適用されるものの、キットを使用していない病院もあります。
脱水を発症していないかは、場合によっては症状の診察を行った後に血液検査が行われます。

嘔吐下痢症の予防方法

ノロウイルスもロタウイルスも、非常に感染力が高いウイルスです。
うつらないようにするためには、どのような対策を行えばいいのでしょう。

ノロウイルスを体内に侵入させないためには

ノロウイルスにはワクチンが存在しないので、予防接種で防ぐことができません。
感染経路は口からの侵入ですので、原因ウイルスが口から入らないようにしていくことが有効な手段となります。
一番おすすめの予防方法は、手洗いです。
トイレから出るとき・食事の前・調理を始める前・嘔吐下痢症の患者さんの看護にあたっている方は汚物の処理をしたり看病のあとなどに、しっかり手洗いを行うことをおすすめします。
石鹸は十分に泡立ててから使用し、指輪も外した状態で流水にて手洗いをします。

基本的に、ウイルスは熱に弱いという性質を持っているものです。
調理をするときには、十分に加熱を行う献立にすることで食中毒予防ができます。
嘔吐下痢症の原因がノロウイルスだというケースでは、食材の中心部に至るまでの温度を85度~90度にし、このまま加熱時間を90秒以上にすることでウイルスが死滅すると考えられています。

ロタウイルスの予防はワクチン接種で可能

ロタウイルスに感染してしまったら薬がないので、対症療法を行うしかないのはノロウイルスと共通しています。
ただ、ロタウイルスにはワクチンがありますので、予防接種を受ければ発症を回避することが可能です。
ロタウイルスワクチンの接種のスタートは、生後15週までというリミットがあります。
予防接種というと注射のイメージがあるかもしれませんが、ロタウイルスワクチンは経口ワクチンなので服用します。
接種の回数が2回と3回のどちらかを選択します。

ロタウイルスワクチンは任意接種に分類されていることから、わざわざ医療機関まで出向いて受けなくてもいいと軽く見られがちになっているかもしれません。
しかし、接種しておくことで胃腸炎を発症する子供が減少しているという事実があり、入院数や救急外来に運ばれる子供が大幅に減少していることから、任意であっても子供に受けさせてあげることをおすすめします。
予防接種を受けない場合は、ノロウイルスと同様の対策で防いでいきましょう。

患者さんの看護時の注意点

嘔吐下痢症の患者さんの看護にあたっている方は、汚物の処理作業に入る前は使い捨てタイプのマスクと手袋を着用した方が安全です。
ウイルスに感染している患者さんの嘔吐物や便がもし飛び散った場合、乾いてホコリと一緒になって浮遊する可能性があります。
浮遊したホコリにくっついているウイルスからも、人に感染する可能性がありますので注意してください。
もし、患者さんの嘔吐物や便が床などに付着したら、一般的に店頭で手に入る塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を浸すようにし、浸けたり拭くなどすることで消毒処理ができます。
嘔吐物を拭き取ったティッシュやタオルなどは、密封してから廃棄する必要がありますので、そのままゴミ箱に入れずにビニール袋に入れてしっかり口を閉じましょう。
患者さんが使用している寝具は、布団乾燥機を使用したり自然光にあてて天日干しするなどして殺菌消毒します。

嘔吐下痢症中の食事

一昔前までは下痢症状があり嘔吐症状はなくなっているという段階の食事について、消化のいい食べ物が推奨されていました。
近年の傾向として、さほど消化のよさは関係ないことになっています。
確かに、下痢症状がひどくほとんど水のような排便が1日に何回もあるようでしたら、消化がいい食べ物が適しています。
便がやわらかいという程度であれば、きちんとした食事指導は行われていません。

嘔吐下痢症中に適した食事

嘔吐下痢症を乳児が発症した場合、基本的には普段食べている離乳食よりも少し前に食べていた内容にします。
多少塩分と水分を多めに調整し、やわらかく調理してあげてください。
幼児が発症したら、おじやややわらかく煮込んだうどんなどといった消化が優れているデンプンなどの糖類が適しています。
魚や肉も口にできますが、蒸したり煮る調理法を行ってください。
理由は脂質を抑えた方がいいからで、炒めたり焼く献立はやめておきましょう。
脂肪分が少ない白身魚のたらやかれいなどは、急に食べるのではなく徐々に口にしていくことが大切です。
大根やカボチャなどの野菜は、十分に煮てやわらかくしたものが食べられます。
リンゴは嘔吐下痢症のときにおすすめのフルーツですが、とはいえリンゴジュースにすると甘過ぎてしまいますので避けてください。

嘔吐症状がおさまっていない段階では、刺激が抑えられているイオン飲料などが適しています。
イオン飲料などは冷やさずに常温にしておき、一気に飲まずに少しずつにしてください。
嘔吐や下痢症状は脱水症になる危険性がありますが、水分補給が行えているなら、食欲がないのに無理矢理食べさせなくても問題ありません。

嘔吐下痢症中に適さない食事

嘔吐下痢症にかかっているときに避けるべき食べ物は、中華料理・ラーメン・天ぷらなどの脂っこい料理や牛乳です。
ミカンなどの柑橘系フルーツは吐き気を引き起こしやすくさせますので、食べない方が無難です。
他にも、栗・さつまいも・砂糖が豊富に含有されている食べ物などの発酵しやすいものはできるだけ口にしないようにしてください。
胃腸が弱っていますから、決してすぐに食べなくてはいけないと考えるのではなく、ある程度は胃腸を休ませるようなつもりでいてください。

嘔吐が長引いたら病院へ

嘔吐下痢症の発症は、日々の予防やワクチン接種などを行えば回避することが可能です。
冬のシーズンが突入する前から、予防を実践して備えていきましょう。
もし、嘔吐下痢症にかかってしまったら嘔吐と下痢を繰り返すことで体内の電解質が少なくなってしまいますので、脱水症状を起こさないように気を付けてください。
身体を十分に休息させ、冷えないようにします。

嘔吐下痢症だと思っていても、嘔吐症状がなかなか改善しないようでしたら腸重責ある可能性も考えられます。
腸重責も冬場に発症し、腸に腸がめり込み腸閉塞になるという疾患です。
心配になったら、早めに病院で正しい診断と治療を受けるようにしましょう。

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