線維筋痛症(せんいきんつうしょう)と聞くと、レディーガガがツイッターで公表した病名として思い出す方も多いのではないでしょうか。
アメリカの人気歌姫を活動休止に追いやった線維筋痛症とは、全身に激しい痛みを発症させる疾患です。

本ページでは線維筋痛症にかかったらどんな症状が生じるのか、どんな治療方法があるのかなどについてご紹介しています。
難病指定を受けられる病気なのか、受けられる場合の条件などについての情報もお伝えします。

線維筋痛症の症状や傾向

線維筋痛症は日本ではこれまであまり知名度が高くありませんでしたが、近年になって知られるようになりました。
欧米諸国では認知度の高い疾患で、特に年齢が40代~50代の女性に多く、およその男女比は男性:女性=1:5と大きな差があります。
患者数は、日本だけでも200万人に達するとされています。

初期症状

線維筋痛症は、目に見えてこれといった初期症状が現れる病気ではありません。
特に見た目の異変は生じていないものの、慢性的な痛みが3か月以上も全身に発症します。

主な症状

線維筋痛症の主な症状は、筋肉・関節・肩など全身に及ぶ痛みです。
他には患者さんによって個人差がありますが、食道や腸に起こる異常・ドライマウスなどの口の乾燥・ドライアイなどの目の乾燥・抑うつ気分・うつ病気分・疲労感・不眠などの症状があげられます。

日本線維筋痛症学会の線維筋痛症診療ガイドライン2013によれば、線維筋痛症は主に身体症状・膠原病様症状・疼痛があるとされています。
身体症状とは、声がしわがれたりかすれる嗄声(させい)・物を飲み込むときに痛みが生じる嚥下痛(えんげつう)・何度も繰り返す咳・膀胱炎症状・アレルギー症状・いびき・体重の増減・呼吸が苦しくなる・身体のほてりや冷感・動悸・便通の異常・腹部症状・疲労感・月経困難症・生理痛などのことです。

膠原病様症状とは、光線過敏・発疹・皮膚のかゆみ・発熱・口内炎・手が腫れ上がる・乾燥症状・こわばり・レイノー現象などです。
レイノー現象とは、緊張や寒さなどによるストレスから、手や足の指の色が変わってしまう現象のことです。
変色する部位と全く変化しない部位が、クッキリ分かれるという特徴があります。
初めのうちは白いですが、次第に赤や紫へと移行して、徐々に肌色に戻っていきます。
色が変わる原因によって呼ばれ方が変わり、原因が明らかでない症状はレイノー病、膠原病など明らか症状はレイノー症候群です。

疼痛とはキリキリ、ズキズキとする痛みのことで、内臓や靭帯(じんたい)や腱(けん)・筋肉・関節・全身性に発症します。

患者さんによって症状の現れ方はさまざまで、部分的に激しい痛みが発症しそれが移動するタイプ、全身の広範囲に渡ってズキズキする痛みが生じるタイプ、不眠、めまい、頭痛など個人差があります。
痛みの程度や発症部位もバラバラですので、線維筋痛症はどんな症状の疾患だと一言で表現するのは困難です。
症状の現れ方も一定ではなく、騒音の有無、気圧や天候の変化なども影響を受けると考えられています。

線維筋痛症は生命にかかわる病気?

レディーガガがかかったという線維筋痛症という病気について、まだ日本で詳しい人は少ないのではないでしょうか。
特にファンの方は「治る病気なのか」「難病なのか」などと心配になるでしょうが、線維筋痛症は生命にかかわるような病気ではありません
ただ、継続的に痛みの症状があり、長引いて慢性化する傾向がみられます。
痛みの程度がひどくなるケースもありますし、内臓の症状が現れることもありますが、進行性の病気ではありません。

合併症の有無

線維筋痛症は、膠原病・各種リウマチ性疾患・過敏性腸症候群・シェーグレン症候群・関節リウマチなどの合併症を引き起こすケースがあります。
慢性疲労症候群と似たような症状を併発するケースも起きています。
慢性疲労症候群の主な症状はひどい疲労感が繰り返されるというもので、さらに抑うつ気分・筋肉の脱力感・睡眠障害などにもつながっていきます。

おちいる悪循環

線維筋痛症を発症すると、患者さんは一定のある悪循環におちいる傾向が指摘されています。
まず線維筋痛症の症状である全身の激しい痛みが起こり、これによって睡眠が妨げられます。
眠れないことから疲労が蓄積したり抑うつ気分などが生じて、これらが線維筋痛症の症状である全身の痛みをさらに辛いものにさせるという悪循環です。
このような悪循環におちいるものの、決してうつ病を発症したわけではありません

線維筋痛症の治療法

線維筋痛症で生じる痛みの治療に一般的な鎮痛薬を処方しても効果が出ませんので、対症療法が行われます。
線維筋痛症の対症療法は、ドライマウス・不安感・抑うつ気分・不眠などといった、何らかの症状と一緒に発症する症状(随伴症状・ずいはんしょうじょう)や痛みに対して処置されます。
痛みを和らげるための治療として、認知行動療法・運動療法・抗うつ薬や抗けいれん薬などを中心とする薬剤の投与などが効果的です。

薬物治療

日本人患者に対する薬物治療として、病院では以下の4タイプの線維筋痛症病型に対し、それぞれに処方される薬があります。

  • うつ型 ── 全身に発症する強烈な痛みと並行して、前面に抑うつ気分の症状がある。
    また、不安感・頭痛・睡眠障害などが伴うケースもある。
    用いられる薬は、ガバペンチン・プレガバリン・抗不安薬・三環系抗うつ薬・デュロキセチン・ミルナシプランなど。
  • 筋付着部炎型(きんふちゃくぶえんがた)── 腱付着部と呼ばれる、骨と筋肉を結び付けている腱が骨と一緒になる部位に炎症が発症する。
    付着部炎は線維筋痛症の症状
    の一つで、膝の関節や、鎖骨・胸骨・アキレス腱を結び付けている関節の胸鎖関節などに痛みが発症する。
    用いられる薬は、プロガバリン・プレドニゾロン・サラゾスルファピリジン・非ステロイド系抗炎症薬など。
  • 筋緊張亢進型(きんきんちょうこうしんがた)──継続的に筋が収縮を起こし、緊張して体中の骨格筋を中心に強烈な痛みが生じる。ドライマウスやドライアイなどの乾燥症状も併発する。
    用いられる薬は、クロナゼパム・ピロカルピン塩酸塩・ガバペンチン・プレガバリンなど。
  • 重複型 ── 上記のうつ型・筋付着部炎型・筋緊張亢進型が重なって発症する。
    用いられる薬は、サラゾスルファピリジン・ミルナシプラン・デュロキセチン・ガバペンチン・プレガバリンなど。

精神科領域の治療法

精神療法で効果をあげる患者さんが、線維筋痛症の治療において大勢いらっしゃいます。
精神科領域の治療は、主に以下の5種類があります。

  • 電気痙攣(けいれん)療法 ── 全身に麻酔を行った状態で電流を脳に通し、脳内にある痛みの反応系をリセットさせることで疼痛を和らげる。
  • リラクセーション ── エリックソン法や睡眠療法。
    エリックソン法は、自然におしゃべりをすることで睡眠を促進し、痛みと眠りの改善を行う。
    睡眠療法は、痛みの症状を眠ることで鎮静化させる。
  • オペラント条件付け行動療法 ── 自らの行動をコントロールすることにより、どのように環境適応能力を身に着けるかを学ぶ治療法。
    全身に発症したズキズキとする痛みに効果を発揮する。
  • 認知行動療法 ── 偏った物の解釈の仕方や考え方を修正し、問題に対処していく方法。
    痛みと抑うつへの自己評価に効果を発揮する。
  • 精神療法 ── カウンセラー・臨床心理士・医師などを中心に、苦痛の除去から話しかけるなどの心理面の治療方法。
    社会的機能・生活機能・抑うつ・睡眠障害・小さなことでも大袈裟に発言するなどの症状に効果を発揮する。

他にも、経頭蓋(けいとうがい)直流電気刺激・反復磁気刺激療法・エデュケーション療法などの治療方法もあります。

統合医療

一般的に現場で実践されている医療というと、主に西洋医学分野の医療を意味しています。
世界に目を向けると、これまでその国々に引き継がれてきたいろいろな伝統的な医学に基づく医療が存在しており、補完医療や代替(だいたい)医療と呼ばれています。
さまざまな代替医療と西洋医療が双方に取り入れ、より優れた治療を目指すものを統合医療といいます。

  • お灸 ── 綿花を原料にすることで痕を残さないお灸は、全身の痛みや冷えの症状に効果を発揮する。
  • 針治療 ── 安全面で比較的優れており、便通・睡眠障害・頭痛・体中に生じた痛みの症状などの効果を発揮する。
  • 食事療法 ── 野菜が中心の食生活で、体中の痛みを緩和させる。
  • 運動療法 ── ゆったりとした動作で行うヨガや太極拳、たくさんの酸素を体内に取り入れる有酸素運動は、体中の痛みの症状に効果を発揮する。

他にも、漢方薬・ブシという生薬の一種のアコニンサン・冷えを治すための湯たんぽ・温泉療法などもあります。

線維筋痛症は難病指定を受けているか

線維筋痛症が、難病指定を受けているでしょうか。
難病指定を受けることができれば医療費の助成を受けられるようになるのですが、線維筋痛症の場合は患者さんの年齢によって違いがあります。
小児期に発症した若年性線維筋痛症であれば難病指定を受けており、成人であれば難病指定されていません。

とはいっても、患者さんが成人に達していたらといって、絶対に難病指定を受けられないわけではありません。
成人している患者さんでも、線維筋痛症において障害者支援サービスを受けられたり、障害年金を受給できるケースもあります。
難病指定を受けられれば、医療費の助成を受けられるかもしれません。
詳細は、お住まいがある各都道府県の保健所で確認できます。

難病の医療費助成申請の手続き

国の指定難病の一つに、若年性線維筋痛症が含まれています。
お住まいの自治体によって必要書類は異なりますが、主に以下の流れで申請手続きが行われています。

以下の方法で、必要書類を入手し準備しましょう。

  • 健康保険証の写し
  • 市区町村の住民税窓口で手に入る市区町村税課税証明書
  • 市区町村の住民票窓口で発行してもらえる住民票
  • 市区町村の窓口から個人番号に関係する調書
  • 市区町村の窓口や福祉保健局のホームページから特定医療費支給認定申請書
  • 市区町村の窓口・福祉保健局や厚生労働省のサイトで入手できる臨床調査個人票
  • その他の必要書類

臨床個人調査票は決して医師なら誰でも発行できるというものではなく、都道府県知事から認定を受けた医師(指定医)でなければ難病の臨床調査個人票の記入・作成することはできません
臨床調査票は難病にかかったという証明になるもので診断書の意味を成しますから、指定医に記入の依頼を行う必要があります。
お住まいの市区町村窓口へ、これらの書類を提出し申請を行います。
指定難病の認定を受けることができれば、医療券がもらえます。
もし指定難病でないと判断されたら、不認定通知が渡されます。
認定されるか否かの指定難病審査会により決定され、約3か月後に結果が知らされます

障害年金は受け取れるか

線維筋痛症を発症したら、障害年金を受け取ることはできるのでしょうか。
そもそも障害年金とは、ケガや病気を発症して仕事に就けなくなったとき、金銭的な援助を受けられるという制度のことです。
年金と聞くと、65歳から受け取れる老齢年金を思い浮かべますが、障害年金は年齢が65歳に満たなくても受給されることができます
障害厚生年金と障害基礎年金の2種類が用意されており、受け取り条件などに多少の違いがあります。

障害年金は、主に以下の基準に達している場合に受け取れます。

  • 受給条件を障害年金の障害等級が満たしている
  • 共済年金・厚生年金¥国民年金に入って保険料を納めている
  • 厚生年金または国民年金に入っている時期に、障害の原因になったケガや病気に関して、初めて歯科医や医師に診察をしてもらった

難病指定で医療費の助成も

線維筋痛症は簡単に完治できる病気とは違い、ある程度長引くケースも考えられます。
患者さんによって現れる症状はさまざまで、対症療法もいろいろありますから、医師からよく治療法の説明を受け、納得できる方法を受けてください。
患者さんの年齢などにより、難病指定を受けられるケースがあります。
難病指定を受けることができれば医療費が助成されますので、詳細についてはお住まいの都道府県の保健所で確認してください。

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