ある一定の不愉快な考えに執着があり、手洗いを何回も行ったり、ガス栓の閉め忘れを繰り返しチェックしたり、左右対称に配置されていないと気が済まなかったりなどということはありませんか。
手洗いやガス栓の確認など誰でも行う行為ですが、必要以上となるともしかしたら強迫性障害(強迫神経症)かもしれません。
ご自身が強迫性障害だという疑いを感じても、他人に理解されないのではないかと心配になったり、本当にそうなら恥だと考えることから、なかなか専門医を受診できない方もいます。

本ページではどのような症状があったら病院では強迫性障害と診断されるかのチェック項目を掲載しています。
直接病院を受診することには抵抗があるという方も、ぜひどの程度強迫性障害の可能性があるかチェックリストを試してみてください。
強迫性障害は、適切な診断や治療を受ければ回復できる心の疾患です。

強迫性障害(強迫神経症)とは

強迫性障害は、英語でObsessive Compulsive Disorder(OCD)といいます。
以前は強迫神経症と呼ばれていましたので、こちらの病名なら知っているという方も少なくないかもしれません。
強迫性障害とは一定の不愉快な思考に束縛されてしまい(強迫観念)、恐怖心や不安感を解消しようと何度も同じ行動を反復してしまうなどの合理的でない行動(強迫行為)をするという心の疾患です。
例えば、家をでるときに施錠確認を何回も繰り返し行う、トイレから出る前に手洗いをしても洗浄できた気になれずいつまでも洗い続けるなどの行為をします。


引用元: 民医連(https://www.min-iren.gr.jp/)

強迫性障害の発症原因

強迫性障害(強迫神経症)はどんな原因で発症するのか、まだ正確な解明がなされていません
ただ、出産・妊娠・対人関係・仕事などによって大きなストレスを抱えることが、強迫性障害につながりやすくすることが明らかになっています。

別の原因としては、強迫性障害の患者さんが身近な家族や親戚にいることが、そうでない場合に比べて発症率を高めるという発表があります。
このことから、遺伝的な要素や家族性の影響も原因である可能性が考えられます。
ただ、患者さんの成長過程において周囲から受けた影響なども原因になっている可能性があることから特定が困難になっています。

また、近年の研究によってセロトニンと呼ばれる精神を安定させる脳内神経伝達物質の代謝が影響していることも解明されつつあります。
さらに脳の画像研究が進められており、大脳にある前頭葉皮質~基底核~視床という回路の機能異常が原因で発症するという見方も強まっています。

患者の年齢層

強迫性障害は、20歳くらいが発症の平均年齢です。
男女の平均を比較してみると男性の方が若いときに発症し、国内の調査では22歳くらいです。
一方の女性は24歳くらいと約2年年齢が高く、きっかけとしては日常生活に大きな変化が訪れる結婚や出産が多い傾向があります。

ただ、すぐに強迫性障害だと認めることに抵抗感を持つ方が多いことから、実際に病院で相談する年齢は平均30歳ぐらいという調査結果もあります。
強迫性障害の特徴として従来は子供の患者数が少なかったのですが、近年は患者全体の約1~2%が子供だと見られています。

強迫性障害のさまざまな症状例

強迫性障害の症状は一つではなく、さまざまな形として現れます。

物の配置などへの執着

物の置き方やバランスに独自のこだわりを持っており、左右対称に配置されていなければ気が済まないなどの執着があり、できていないと不安感を抱えます。

数字に対する執着

一般の人でも縁起担ぎをしたり、自分だけのラッキーナンバーや縁起の悪い数字がある方は大勢います。
そういったごく普通の域を超えて執着するようでしたら、強迫性障害の症状の一つの可能性があります。

儀式行為

自分の中で一定のルールを持っており、その順番で事が進められないと悪い出来事に見舞われるのではないかといつも心配しています。
臨機応変になれず、どんな状況になっても同じ手順で家事や仕事などに取組みます。

確認行為

外出する際には、誰でも電気器具のスイッチを切ったか、ガス栓を閉めたか、戸締まりをしたかなどをチェックするものです。
ただ、極端に何回も確認作業を繰り返す場合は、強迫性障害の症状の一つである確認行為だと考えられます。
具体的には何回も確認する、手でも触ってみてチェックする、指差し確認を行う、じっと見張るなどがあります。

加害恐怖

自分が他の誰かに危害を与えていないかいつも心配で、事故や事件としてメディアに取り上げられていないかテレビや新聞などをチェックしたり、周りの人や警察などに確認します。

汚染恐怖・洗浄

細菌やウイルスに汚染されることや汚れの付着をとても恐れます。
洗濯・入浴・手洗いなどを必要以上に何回も行い、手すりやドアノブなど汚いと思ったら恐怖感で触ることができません。

セルフチェック

以下の5項目は、病院で医師が強迫性障害の診察に使用しているチェック項目です。

  • 左右が対称であることや順番が正確であることに執着がある
  • 1日にやらなければならないことを終わらせるまで長い時間が必要
  • 忘れたいのにいつまでも忘れられず思い悩んでいる考えがある
  • 何回も確認作業をする
  • 掃除や手洗いを何回も行う

上記の中で思い当たるものがあれば、医療機関で強迫性障害の適切な治療を受けることで改善できますから相談してみましょう。

強迫性障害の治し方

病状や合併症の有無、合併症がある場合はその病気の種類などによって治し方が異なりますが、認知行動療法と薬物療法を並行して行うケースが一般的です。

強迫性障害は何科を受診するの?

強迫性障害の診察や治療は、心療内科や精神科を受診します。

認知行動療法

心理学を利用した治し方をすることは、全て認知行動療法といいます。
強迫性障害で行う認知行動療法は、曝露反応妨害法です。

曝露反応妨害法は、暴露という患者さんがずっと恐怖心を抱いていた状況に向き合い、反応妨害という恐怖心や不安感をなくすべく取ってきた強迫行為を行わない努力をするという治し方です。
具体的には、いつも確認せずにはいられないことをあえてガマンする、手を洗浄したくても洗わないなどということを継続的にしていきます。

曝露反応妨害法をスタートさせた当初こそ強烈な不安感に見舞われますが、回数を重ねるほど強迫行動をしなくても心が乱されずにやり過ごせるようになり、強迫行為が減少していくことが期待できます。
患者さんが不安に感じることに対峙するという曝露反応妨害法は強迫性障害の治療法の中でもかなりハードな治し方となることから、詳しい専門医に担当してもらうことが大切です。

薬物療法

強迫性障害の薬物療法では、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの量を、抗うつ薬としても用いられているSSRIによって調整していきます。
SSRIとは選択的セロトニン再取り込み阻害薬で、ある程度長い期間は飲み続けることになります。
飲み始めは少量から、効果に応じて徐々に量を増やします。

薬物療法に取り組むときは、副作用が心配になるところでしょう。
SSRIの副作用は、不安感や吐き気が強まる症状が一時的にでますが、比較的軽いと考えられています。
ただ、服用が長期間に渡ると性機能低下の副作用の可能性がでてきます。
時期に応じて、かかりつけ医と相談しながら決めてください。

患者さん本人にできる取り組み

患者さんご本人が今日から始められる取り組みとして、まず疲労を蓄積しないこと、そのために必要な休息を取ること、できるだけストレスを軽減させることなどがあります。
強迫観念(不快になる考え)が生じた際には、簡単に強迫行為(恐怖や不安を消すために繰り返す非合理的な行動)をせずに一旦気持ちを落ち着かせることが重要となります。

専門医の治療を受ける段階に入っている方は、強迫性障害という病気について患者さんご自身が正確に理解すること、医師を信頼して「治った」といえる日が来るまであきらめないことが大切です。
以下の4つを、ぜひ心掛けてみてください。

  • 明確な目標(進学・復学・就職など)を掲げて、その達成に向けて治療に専念する
  • 専門医に相談をして、治療内容に納得した上で続けていく
  • 強迫性障害は治せる病気だという事実を知り、自分が治すのだという意識を強く持つ
  • 強迫性障害は決して性格を表現する言葉ではなく立派な病気であることを認識し、本人が弱いから、またはそういう性格だからなどという問題でないことを理解する

薬物療法で処方される薬が予想以上に多いと不安がよぎったり、認知行動療法で心配がつのることもあるかもしれません。
そんなときは、現在行っている治療に対し今どのような気持ちを抱えているか主治医に相談し、じっくり話し合いの機会を持つべきです。
どんな目的から現在の治療が不可欠なのか、もしくは他にどんな治療法の選択肢があるかなど納得がいくまで聞いてください。
わからない部分があれば質問して、治療への不安を取り除くことが大切です。
現在服用中の薬を医師の判断なしに中止してしまえば、せっかく改善しつつあったのに無駄になってしまいますので、気になっていることは直接聞きましょう。

強迫性障害と症状が似た別の心の病気

強迫性障害と診断を受けるとき、別の心の病気も併発しているケースもあります。
強迫性障害と似た症状が現れる別の病気などに、以下の種類があります。

強迫性パーソナリティー障害

強迫性パーソナリティー障害はObsessive Compulsive Personality Disorder の頭文字を取ってOCPDと呼ばれることもあります。
完璧主義の傾向を持ち、秩序正しいことを非常に好む要素が災いして、周りの方も当の患者さんご本人も苦しい思いをします。
強迫性障害と似ているようですが、大きな違いは強迫性パーソナリティー障害の患者さんは強迫的であることを不合理だと思いっていないところです。
不合理かどうかというよりも、自分はそういう性格の人なのだという認識をしています。
なにかのきっかけで自分のルールや完璧さが崩された場合に不安感が強まり、かかわった相手とトラブルに発展するケースもあります。
ただ、強迫性パーソナリティー障害を併発する患者さんは少数です。

社交不安障害

社交不安障害はSocial Anxiety Disorder の頭文字を取ってSADと呼ばれることもあります。
他人の視線を感じること、人前に出ることなどに強烈な恐怖感を抱く病気で、強迫性障害の患者さんの中には社交不安障害を発症したことがある方もいます。

限定性恐怖症

限定性恐怖症の患者さんは、密閉空間(エレベーターなど)や高所、虫、犬などに恐怖感を抱きます。
ただ恐いというレベルではなく極度なレベルであることから、パニック発作を発症する場合があります。
ご自身が強い恐怖感を抱く対象を回避しがちになるために、中には日常生活がままならなくなるケースもあります。

パニック障害

パニック障害は体の健康状態には問題がないにもかかわらず、急に心臓が激しく鼓動してパニック発作が生じます。
密室や電車内などの特定した状況や場所でいつもパニック発作が発症しやすいのでそこを回避したがるタイプと、そのようなところを持たないタイプとに大きく分かれます。
パニック発作は、強迫性障害の患者さんの1~2割の方が体験しているといわれています。

うつ病

うつ病は夜眠りたくても眠れない、食欲が湧かない、気持ちが沈む、やる気が湧かないなどの症状が現れます。
強迫性障害の患者さんは、本人も決して合理的でないと承知している強迫症状があるとき、精神的にも身体的にも疲弊してうつ病を併発することがあります。

早く病気を受け入れて治療を

多くの方が強迫性障害の可能性をスムーズに受け入れにくいので、受診が先延ばしになる傾向があります。
原因はまだ解明されていない病気ですが、治療を受けることで治った患者さんがたくさんいます。
やり過ぎだと患者さんご本人も承知していますし、とっくに疲れたと思っているにも関わらずやめられない病気です。
そのままにして何も手を打たずに重症化しないよう、強迫性障害は正しい治療で回復する病気だということをできるだけ早く理解し、病院で専門医に相談をして辛い毎日から解放されてください。

スポンサードリンク

スポンサードリンク