いい評価と悪い評価を極端にしてしまい、自分にも他人にも白黒ハッキリつけるクセがある、あいまいな評価ができなくて、自らを苦しめているなどと悩んでいることはありませんか。
そういう性格なのだから仕方ないと自分を責めて苦しんでいるかもしれませんが、もしかしたら境界性人格障害(境界性パーソナリティ障害)という病気にかかっているのかもしれません。
境界性人格障害の発症は特に20代に多く、約80%が女性といわれています。
残りの約20%は男性ということになりますが、腕力があるためにときには暴力という形で症状が現れてしまうケースもあります。

境界性人格障害の原因はまだ解明されていませんが、幼少期の環境や遺伝に原因があるとの見方がでています。
本ページではそんな境界性人格障害という病気について、どんな特徴があり、どんな症状が現れ、どのような治療が行われているかなどを取り上げていました。
ただの性格ではなく病気の症状だとしたら、改善の可能性があるかもしれません。
ぜひ、参考になさってみてください。

2つの境界がある境界性人格障害

人間は年齢を重ねていくうちに、いろいろな個性を持ちながら発達を遂げていく生き物です。
個性は例えばおおらか、神経質、飽きっぽい、怒りっぽい、几帳面、陽気、前向きなどの性格を表現する言葉で表すことができます。
個性があるのは一般的なことですが、一部の性格に偏り過ぎてしまったり、日常生活を穏やかに送りたいのに気が付けば自分自身も周囲の人も苦しい状態に追い込んでしまう人が少なくありません。
このような時期を迎えている方を国内では人格障害、精神医学分野においてはパーソナリティ・ディスオーダーと呼んでいます。

人格障害の方の中でイライラの激しい感情を抑制できない、良いか悪いかなどの分別を極端に判断して中程度やあいまいという評価が下せない、気分に大きな波があり感情に安定感がないなどの症状がある方は境界性人格障害となります。
境界性人格障害という病名ですが、人格障害というネーミングがいい印象を与えないのではということから、近年は境界性パーソナリティ障害という呼び名が一般化しつつあります。
境界性パーソナリティ障害は英語でBorderline Personality Disorder ということから、省略してボーダーと呼ばれることもあります。
人口の2%近くは、境界性人格障害だといわれています。

境界性人格障害の特徴

境界性人格障害は名前にある「境界」の言葉がキーワードの疾患で、患者さん本人の中にまるで境界があり、どちらか2つの極端な考え方をするのが特徴的です。
極端なので「ほどほど」がなく、『白か黒かの思考』という表現がなされています。
気分がプラス状態のときはとてもハッピーなのですが、反対に気分がマイナスのときはどん底のように不幸で、いつもこの2極端の間で揺れています。

20代に多く全体の80%近くが女性の患者さんだといわれています。
ということは、逆に言えば20%近くは男性だということです。
男性の患者さんは他人と接するときに出る症状として極端にマイナス思考になって相手を責め立てるとき、腕力があるが故に暴力に発展するケースも少なくありません。
極端な思考を持って恋愛対象を責めたり暴力を振るったからといって、必ずしも境界性人格障害だと決めつけることはできません。
境界性人格障害は判断が難しい病気の一つですので、もし病気の可能性を感じたら専門医に相談してください。

境界性人格障害は20代という若い女性患者が多い疾患なのですが、年齢を重ねるにつれて症状がやわらいでいくケースが多い傾向があるようです。
自傷や衝動行為などは10代や20代を中心とした若年層の方がやるという話は聞くことがありますが、あまりリストカットする中年女性の話は耳にしません。
治療をスタートしたらある程度の時間がかかるかもしれませんが、一生続くわけではないと肩の力を抜いて、周囲の方は全部を受け止めてしまったら完治まで続かないと考えることが病態をいい方向に向かわせてくれることでしょう。

境界性人格障害の症状

境界性人格障害には、主に下記のような症状があります。

  • 強烈なストレスを受けると一定の期間限定で記憶が飛び、まるで精神病のような症状をよく起こす
  • 生きていることに違和感や辛さがあり、自分は何者なのかと疑問に思っている
  • 常に空っぽな気持ちを抱えていて、ほとんど幸福を実感できずにいる
  • ショッピング、大食い、万引き、セックス、飲酒、ドラッグなどといった自分を損なう行動への依存傾向が見られる
  • 自傷行為や自殺をするような行動を人に見せつけては、周りの人を繰り返し動揺させている
  • 気持ちにブレーキがかけられず、些細なことでも激しい怒りをぶつけたり、かと思えばとても傷つきやすく繊細である
  • 感情や気分がコロコロと変動し、周りの人を困惑させる
  • 仲のいい人がコロコロ変わり、交流に安定感がない
  • 妄想もしくは現実の世界で他人から見限られることを激しく恐れており、不安感がある

境界性人格障害になる原因

境界性人格障害になる原因は、まだ明確に解明されていないのが現状です。
ただ、環境と遺伝の2要因の影響が大きいのではとの見方が濃厚になっています。

環境的な原因

環境というのは、子供時代に虐待を受けた、母親から十分な愛情を得られなかったなどのことで、それらがきっかけとなって発症につながったという見方があります。
幼少期というのは、母と子との愛情関係が構築される大切な時期です。
この時期に母子の愛情関係がうまく築き上げられないと、以降感情を制御する能力や自己形成が難しくなり、子供の人格がかたちづくられることに影響されると解明されてきました。

子供が親離れしていい年齢に達しても子離れや母親離れが達せられず、共依存と呼ばれるお互いが依存関係におちいってしまう状態になるケースがあります。
成長する時期に子供を認めない、褒めない、荒探しばかりしていつも子供を否定しているなどという場合、どうしても親の顔色を見て親の価値観に合わせ過ぎる子供に育ちます。
そのような生真面目な優等生タイプに成長した子供は、自己肯定感が乏しく、幸福感をなかなか実感できないことから、境界性人格障害を患うケースがあります。

遺伝的な原因

人の性格はさまざまですが、生まれたときから境界性人格障害を発症しやすい傾向の性格を持った方がいるといわれています。

他人との間に生じる障害

境界性人格障害は患者さん本人の心の中に境界があるだけでなく、他人との関係性にも境界を見出してしまいます。
相手にプラスのイメージを抱いているときはとても好感を抱いているのに、マイナスのイメージに変わったときには一気に不平不満を募らせるようになったりします。

例えば、恋愛対象との関係では、プラスのときは「大好き」「あなたがいないと生きていけない」「いつまでも一緒にいて」などと好意を示します。
一転してマイナスに反すると、ほんのわずかな出来事や思考をきっかけとして、恋人から「見捨てられる」という考え方を強めてしまいます。
電話をかけても折り返しがなかったことがたった1回あっただけで、「嫌われた」「捨てられる」「捨てる気だなんて許せない」などの恐怖感や攻める気持ちにさいなまれます。
恋愛関係を解消され見捨てられないためには、恋人に暴言を吐いたり、患者さんによっては暴力行為に至ることすらあります。

自分を傷つける行動へ

自分を傷つける行動自傷や衝動行為という症状が現れるケースもあります。

  • 薬物の乱用や過剰服薬
  • 過食や逸脱した性行動
  • 自傷行為(リストカットなど)

患者さんとの接し方

境界性人格障害の患者さんは、他人に対していつも恐怖心や不安感があるものです。
もし、あなたの家族やお知り合いに境界性人格障害だと診断された方がいたとしたら、極端な扱いを受けることが多々あるのではないでしょうか。
例えば、わざわざあなたを突っぱねて遠ざけるようなことをしてくる、あなたを振り回して疲弊させるなど。
そのような態度は自己表現の一種であり、たいていの場合は相手を試している行動です。

どうしてそんな行為に及ぶのか、表面だけに感情的にとらわれて見限るのではなく、内側に潜む心理に目を向けることが大切です。
反抗的な態度などを改善させようとするよりも、まずは受け入れることが必要です。
気持ちの赴くままに否定するのではなく、理解を持って接していくと、解決につながる糸口に辿り着けることもあります。

周りの方は境界性人格障害の患者さんと、どのような接し方をしていけばいいのでしょう。
接し方で押さえておきたいポイントも、やはり「境界」です。
患者さんとの境界を明確に提示することで、周囲も振り回されて疲弊することを回避できます。
患者さんが他人に頼り切ってしまう状態を作らないことが、本人の為でもあります。

境界のポイントとは、例えば「あなたの力になりたいから、ここまではサポートする。でも、ここから先はあなた自身の問題だから助けられない」「相談に乗れる時間帯は19時まで。それ以降は電話をくれても出ないよ」などといった感じで明らかにします。
相談相手はできることとできないことをハッキリわかりやすい線引きで示し、全面的に背負おうとしないことが、境界性人格障害の患者さんのためにも肝心なことです。

境界性人格障害の治療

境界性人格障害の治療と一言でいっても、医療機関によって異なることがあります。

心理療法で治療する場合

ある病院では、境界性人格障害だと診断されたら主に心理療法で治療が行われます。
周りの方々とどのような距離感で接していくのが適切かなど、徐々に調整されていきます。
患者さんの性格にかかわる病気だから完治が難しいか思われるかもしれませんが、治らない病気というわけではありません。

行動療法とカウンセリングで治療する場合

また他の病院では、行動療法とカウンセリングによって治療が行われます。
ちりょうには臨床心理士と精神科医があたり、同時並行で根気を入れて進められます。
薬物療法としては抗不安薬や抗うつ剤が用いられ、冷静さを失う、怒りが沸く、強い不安感にさいなまれる、気持ちが沈むなどの症状に有効です。

境界性人格障害特有の症状の一つに、対人関係に安定感がないというものがあります。
それは治療にあたっている臨床心理士や精神科医に対して生じることも予想されますが、信頼することと、全員が回復を目指すという同じ目標に向かいながら、長期化することも見据えて治療に打ち込むことが大切です。

治療したら回復するの?

境界性人格障害の患者数が最も多い年代は、20代だということがわかっています。
この調査結果を言い換えると、20代以降も死ぬまで永遠に治らない病気だとすれば、年代が高くなるにつれ患者数が減るわけがありません。
境界性人格障害にかかった患者さんの多くは、年齢が30代中ごろ辺りから改善する傾向が実際にあります。

境界性人格障害は治るまでにある程度長期化する覚悟が必要な疾患とはいえ、いい報告もあります。
あるアメリカで行われた調査の結果によれば、境界性人格障害との診断を受けた人の1年後をチェックしたところ、約4割の方は診断基準を満たさなくなっていたとのことです。
自然に4割近い人が改善していたというのは、希望の持てるうれしい結果ではないでしょうか。
「人格や性格など問題を抱えていたとしても、それは決して一生涯続くわけではなく、長い人生のある時期のみ抱える問題なのだと捉えることが大切」といった内容のことを、精神科医の林直樹さんが言及されています。

肩の力を抜いて治療に向き合う

境界性人格障害を治療するには、対人関係の取り方を調整していくことや、気分の落ち込みや不安感などに薬を用いるなど、病院や患者さんの症状によってさまざまな方法が行われています。
ご本人や治療にあたる専門医が境界性人格障害を治すという目標に向かうことは大切ですが、家族など周囲の方の理解や協力が改善の力になる病気です。
境界性人格障害の治療は長期化しやすいものの、一生続くわけではないのだと肩に力を入れ過ぎないことも必要でしょう。
年齢が高くなるにつれて改善するという病気の性質を味方につけて、治療に取り組みたいものです。

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