自分のアイデンティティを失っていると感じ、意識が飛んでいることがあるなら、もしかしたらただの物忘れではなく解離性障害という病気かもしれません。
過去に重篤な精神的ストレスを受けたことがあるなら、さらに解離性障害である可能性はアップします。

解離性障害はカテゴリーの種類がとても多いという特徴があり、ご家族など周りからの病気に対する理解がとても大切です。
本ページでは発症原因や症状、治療方法など、解離性障害についてまとめました。
今ご自身の状態に悩んでいる方はもちろんのこと、解離性障害に似た症状の方が身近にいて助けになりたいとお考えの方などの一助になれれば幸いです。

解離性障害とは

自分が自分である認識がなくなってしまう病気が、解離性障害です。
解離性障害の患者さんにはさまざまな症状があり、初めて訪れた場所に気が付いたら自覚なく到着している、カプセルの中にすっぽりと覆われているように現実感を感じられない、一定の記憶が完全に消えてしまうなどがあります。
解離性障害の解離性同一性障害(多重人格障害)は、一人の患者さんの中に複数の人格が出現するという疾患です。
1つの人格が出現している間には他の人格が出ていたときの記憶が消えているケースが多いことから、日常生活を送る上でいろいろな困難が生じます。

複数の人格が現れる原因は、辛い過去の記憶を自ら消し去ろうという防衛反応の一つだといわれています。
家族やお知り合いなど周りの方たちが、患者さんの解離性障害という病気に理解を示すことが重要になります。
また、治療を効果的に行うには、患者さんにとって安心感を持てる環境づくりが力となります。

解離性障害になる原因

人間は基本的に知覚、意識、記憶、アイデンティティ(自我同一性)が一つにまとまっている存在です。
心理学などにおけるアイデンティティという言葉は、場面や時を超越して人間には一つの人格を持っており、自分のことを自分として確信するための自我統一をすることを意味します。

解離性障害の解離という言葉は、一定の期間だけに限り知覚や意識、記憶、アイデンティティをひとまとめにする機能が損失された状態をいいます。
具体的には気持ちに麻痺が生じたり、部分的に知覚を失ったり、思い出や記憶が特定の部分のみなくなったりなどします。

しかし、解離状態にある解離性障害の患者さんは、普段であれば体験することがない行動や近くが生じるケースがあります。
代表的な異変には、シャーマニズムや多重人格障害などといった新しい人格が作られることや、逃走するなどの異常行動などがあげられます。
こうした解離現象は、健康な人に生じることもあれば、一時的で軽度なこともあります。

これらが深刻さを増して日常生活がままならなくなると、医療機関で解離性障害と診断されます。
解離性障害が発症する主な原因は、心的外傷やストレスがかかわっていると考えられています。
原因である心的外傷は患者さんによってもさまざまで、戦闘体験・長期的な監禁状態・性的虐待などの繰り返されたこともあれば、暴行被害・事故・災害に遭うなどの一時的なこともあります。
辛い経験で傷つかないようにと、緊急避難をする目的で精神が一部分の機能を中断させることが解離性障害の原因になると考えられています。

解離性障害のカテゴリーとその症状

解離性障害には複数のカテゴリーがあり、それぞれに症状や特徴が異なります。
ICD-10という世界保健機構が設けた診断ガイドラインでは、以下の種類などがありますので、可能性があるものはないか特徴をチェックしてみてください。

多重人格障害

アメリカ精神医学会の診断ガイドライン(DSM)においては、解離性同一性障害と呼ばれています。
患者さんは何人もの人格を持っており、代わるがわる別人格が出現するという症状がでます。
ある人格が登場している時間は、その他の人格にその記憶が残っていないことが多いので、日常的に暮らしている中でトラブルが生じることも多々起こります。

解離性てんかん

心理的な原因がきっかけとなり感覚がなくなる、身体を思い通りに動かすことが困難になる、昏睡状態におちいるなどの症状を発症します。

離人症(りじんしょう)

本人の個性がさまたげられ、まるで自分自身のことを外部から傍観しているような感覚にとらわれる疾患です。

解離性昏迷(かいりせいこんめい)

他人と会話をしたり、身体を動かすことが困難になる病気です。

カタレプシー

身体が硬直して動けなくなる症状が現れます。

解離性遁走(とんそう)

自分の個性(アイデンティティ)が損失し、行方をくらまして新生活をスタートさせるなどの行動にでます。
勤務先や学校で激しいストレスにさいなまれ、そのことを打ち明けられない状況に追い込まれた中で唐突に症状を発症します。
解離性遁走の多くの患者さんは、発症前の自分の記憶がなくなる症状がでます。

解離性健忘(かいりせいけんぼう)

心的なストレスが原因となり、出来事の記憶が失われるという疾患です。
ほとんどの患者さんは発症から何日か経てば記憶が回復するのですが、長期化するケースもないわけではありません。

これらの他にも解離性障害には非アルコール性亜急性錯乱状態、反応性錯乱、多重人格障害、心因性錯乱、心因性もうろう状態、急性精神錯乱、亜急性錯乱状態、ガンサー症候群、神経性眼精疲労、心因性難聴、解離性感覚障害、憤怒痙攣、解離性痙攣、心因性振戦、心因性失声、失立、解離性運動障害、ヒステリー性失声症、ヒステリー性運動失調症などの種類があります。

解離性障害の患者さんの症状は、決して誰もが理解してくれるというものではありません。
中には利得が生じる症状もあり、その場合は利益を手にするもくろみで、あたかも解離性障害であるかのように振る舞っていると誤解されるケースも起きています。
その症状は専門医ですら正しい診断を誤ることもあるほど、見極めが困難です。

ある特定の文化環境、民族、エリアで発症しやすい精神障害(文化結合症候群または文化依存症候群)というものがあります。
以前の解離性障害は「解離」という表現が使用されない状態で、精神医学のさまざまな場面にて注目を集めてきました。
現在文化結合症候群とされているものの大部分は、解離性障害だといえます。

解離性障害の治療

解離性障害の治療で最も必要なことは、患者さんにとって治療に専念できる安心が得られていること、かかりつけの医師が信頼できる相手であること、家族など周りからの理解を得られていることです。
病気を発症したのは、精神的なストレスを受けたことによって他人への自己表現が困難になってしまったことが主な原因です。
ですから、解離された心の問題は信頼できる相手でないと伝えることが困難なのです。

暗示や催眠は効くのか

ほとんどの解離性障害の症状は時間の経過でおさまってきますが、他の症状と移り変わってしまうケースがほとんどという特徴があります。
治療の中には、早期のうちに暗示や催眠などといった手段で解離性の健忘、麻痺、失声、失立などを解決するというものがあります。
しかし、暗示や催眠などは効き目がありませんし、それどころか始める前よりさらに酷くなることすらありますので注意してください。
患者さんが自己表現できるチャンスや安心して過ごせる安全な状況を用意しつつ、解離性障害の症状が自然に改善していくのを待つという姿勢も大切です。

薬物療法

解離性障害には、特効薬はないと考えられています。
症状の一つに幻覚があり、統合失調症と間違えられやすいのですが、だからといって抗精神病薬を投与されても効果は期待できません。
医療機関で処方されているのは、抗精神病薬よりも解離性障害の各症状を進行させているような供存症への治療薬です。
具体例としては、神経症症状(PTSDを含む)の精神安定薬や、うつ症状に処方される抗うつ剤などがあります。

解離性障害の事例

解離性障害はさまざまな症状や原因があり、患者さんにより異なります。
具体的な事例から、どんな解決法なら改善の期待が持てそうなのか、参考にできる部分があるかもしれません。

10代の娘が解離性同一性障害

ある男性は10代の娘さんがおり、解離性同一性障害を発症しています。
さまざまな人格が現れ、ときには若い男性の人格だったり、性格も明るかったり気性が激しかったりなどバラバラだということです。

もし、解離性同一性障害などの心理的または精神的な疾患の疑いがあり、まだ病院で診てもらっていないという場合は、正しい診断を受けて治療を行うことが重要ですので専門医を受診することが第一です。
心理的または精神的な疾患というものは必ずしも一つの症状だとは限らず、いくつもあるケースが多々ありますので、素人判断では間違いやすいためです。

解離性同一性障害の患者さんは、一人で抱えきれないほどのストレスを背負っていると推測できます。
ストレスの原因を取り除くことが回復の大きな助けとなりますので、そのために患者さんが安心して治療に専念できる環境を整えてあげてください。

そのために、以下の3つを実践しましょう。

  • 全く別の人格(交代人格)が登場しても、その人格を無視しない
  • 患者さんに対して、尋問したり追い詰めない
  • どんな症状が現れるのか患者さんが話したら、もし仮病かもと疑いたくなるような内容だったとしても、仮病扱いせずに信じる

これから始めて医療機関を受診される場合は、下記の5ポイントをメモして持参すれば、要点を逃さず伝えることに役立ちます。

  • これまでの病歴
  • 治療歴や通院歴があれば、通っていた医療機関はどこか、どんな治療薬が処方されていたか、どのくらいの期間通院したか
  • 初診の際に解消したいと思っている症状、投薬も含めて医師にしてもらいたいこと
  • 診察を受ける時点で一番本人が心配なこと、悩み、困っていること
  • 症状が現れたのは自覚がある範囲でいつ頃からなのか、そのときの具体的な症状について

病院で治療を受ける期間は、ある程度長くなるのが一般的な病気です。
患者さんはもちろんのことご家族も大変かもしれませんが、周りの方のサポートがあれば順調な回復が期待できます。
できれば、通院の際は家族が付き添ってあげられることが理想的です。
医師に患者さんが直接なんでも話せればいいのですが、もし話せずにいることがあるようでしたら、ご家族から伝えてあげましょう。

解離性障害で別人がある10代女の子

ある大学生の女の子は現在10代ですが、中学生のときに統合失調症や解離性障害などを発症し、入院もしていました。
すでに退院して気持ちが落ち込むなどの症状は解消されていて、薬も使用していないのですが、まだ解離性障害は残っています。
解離することが今もたびたびあり統合を試みたのですが、難しいのでもう行っていません。
トラウマが原因で発症するのでそのトラウマを解消できれば解離性障害も治ると考えたのですが、原因である出来事を思い出せないので解消することができずに困っています。

解離性障害は臨床結果などにおいてその効果に対し、科学的な根拠(エビデンス)を得られた治療方法はまだ確立されていないのが現状です。
ただ解離性障害の多くの患者さんはトラウマを抱えている傾向がありますので、トラウマ解消が病気を治すことに役立つと考えられます。
トラウマは人それぞれですが、中には大切に扱われていないと感じたというものもあります。
トラウマは辛い出来事ですので、記憶の奥に閉じ込めて思い出せないケースもあります。

トラウマの治療として現在実施されているものに、EMDRが中心の心理療法があります。
解離性障害の治療では、日常生活を送ることもままならない症状の患者さんを対象として対人的ストレスを下げる、苦しさへの対応方法をするなどの取り組みが認知行動療法にてなされています。

本人が病気の自覚を持っていないことも

解離性障害の患者さんが抱える問題は、家族など周りの人々が病気について理解することで回復がスムーズになります。
解離性障害と一言でいっても多くのカテゴリーに分類されていますので、どんな症状が現れているから病気にかかっているのか断定するのは困難でしょう。
周囲の方が病気を理解できないばかりか、ご本人が病気にかかっているという認識を持てずにいることもありますので、疑いがある場合は早めに専門医を受診してください。

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