夜寝ているのに昼間に眠くて仕方がない、大事な会議や試験中でも睡魔に襲われてどうにもならないなど、日中に何度も眠くなるという症状はないでしょうか。
このような人はそうでない人が2日徹夜した後と同レベルの眠気を感じている、ナルコレプシーという病気の可能性があります。

ナルコレプシーは睡眠発作と呼ばれるほど強い睡眠欲の症状が現れ、世界では2,000人に1人という多くの人が悩まされています。
最も発症率が高いのは14歳~16歳で、10代が中心です。
そんなナルコレプシーという病気について原因や症状、対処法などをご紹介していきます。
セルフチェックもありますので、もしご自身の症状が病気かもしれない場合は専門医の治療が受けてください。

ナルコレプシーのさまざまな症状

ナルコレプシーといえば昼間の睡眠発作が代表的な症状ですが、それだけではありません。

睡眠発作

睡眠発作の症状は午前中~午後に現れますが、起床直後は一般的な方とあまり変わらない程度の眠気です。
ずっと眠いというわけではなく、症状が現れる時間は1回あたり数分~30分以内です。
この発作は1時間~数時間のスパンで訪れ、居眠りをしたあとは患者さんによっては頭が冴えます。
睡眠発作の症状が現れる期間は最低でも3か月、これが連日続きます。

入眠時幻覚

全てのナルコレプシーの患者さんに現れる症状ではありませんが、寝る前に動物や人影などの幻覚を見るという入眠時幻覚があります。
幻覚の他に幻聴が聞こえる、浮遊感があるなどの症状もあり、夜の就寝前に限らず起床する
直前や日中に居眠りをする前などにも入眠時幻覚が生じるケースがあります。

睡眠麻痺

睡眠麻痺は、金縛りの呼び名の方が知られているかもしれません。
ナルコレプシーにかかって間もない、多くの患者さんに現れています。
睡眠麻痺の症状は眠る前に現れ、体を起こそうとしても体が言うことをきかない、発声できない、力が体に入らないなどがあります。

カタプレキシー

カタプレキシーは情動脱力発作とも呼ばれ、この症状が現れるときは全身、下半身、膝などの力が抜け落ち、場合によっては転倒してしまいます。
強烈な感情(怒る、爆笑する、驚くなど)が生じたときに、全身もしくは一部分の姿勢を支える筋肉が脱力するからです。
脱力する時間は数秒~1・2分ほどで、症状が生じる筋肉が顔の場合は目を開けられない、しゃべれないなどの不具合につながります。

※ ナルコレプシー以外にも、強烈な睡眠欲に襲われる疾患は以下のものがあります。
周期性四肢運動障害、睡眠時無呼吸症候群、覚醒不全症候群、特発性過眠症、反復性過眠症、真性過眠症など。

病院を受診するなら何科?

ナルコレプシーの疑いを感じたら、病院の何科を受診すればいいのでしょう。
神経内科や精神科、睡眠障害を専門に扱っている医療機関などですが、ただの神経内科や精神科ではなく睡眠障害に詳しいところで検査や治療を受けられることをおすすめします。

ESSでセルフチェック!

普段の眠気についての評価に利用されているチェックシートに、エップワース眠気尺度(ESS)があります。
エップワース眠気尺度は、世界各国の病院の診断基準や産業保健などに採用されているものです。
昼間に眠気に襲われる状態が続くことは仕事や学業、プライベートの時間を過ごすときのストレスになります。
ぜひ、以下のエップワース眠気尺度でセルフチェックを行い、ナルコレプシーの判断の目安に役立ててみてください。

チェック項目は全部で8つあり、0~3で評価をつけます。
ごく最近のご自身の日常生活に照らし合わせ、大いに当てはまるという場合は3、よく当てはまるなら2、ときどきなら1、全く当てはまないなら0です。
そのような状況にならないという場合は、そうなった場合を想定して回答します。

  1. 車の運転中に信号を何分間か待っている間、うとうとしてしまう
  2. 昼食後に座って静かに過ごしていると、居眠りしてしまう
  3. 座った状態で人と話をしているときに、居眠りをしてしまう
  4. 午後に静かに横たわっていると、居眠りしてしまう
  5. 知り合いに運転を任せている車内にて、走行時間が1時間継続しているときに居眠りをしてしまう
  6. 映画館や会議などたくさんの人がいる状況で、居眠りをする
  7. テレビを見ながら、うとうとする
  8. 書籍などに座った姿勢で目を通している際、居眠りしてしまう

いかがだったでしょうか。
0~3の評価を全て合計してみてください。
合計が11を超えた方は昼間での睡眠欲が高いと評価され、ナルコレプシーの可能性が高いといえます。
睡眠障害に詳しい専門の医療機関などで早めに相談しましょう。

ナルコレプシーにかかる原因とは

脳内には眠りをつかさどる機能がありますが、ここに異常が生じることでナルコレプシーを発症します。
ヒポクレチン-1(オレキシン)は脳内のアミノ酸結合物(神経ペプチド)で、なにかの原因でこれを生成する神経細胞が機能できなくなることがナルコレプシーにつながります。

ヒポクレチン-1は、エネルギーの代謝を整えたり覚醒と眠りの調整を行うという大切な仕事を担っています。
ヒポクレチン-1にまつわる神経機能がナルコレプシーの患者さんはほぼ消え失せていることから、コントロールが十分に行われず、睡眠発作などを発症させてしまいます。

ヒポクレチン-1神経がナルコレプシーにかかることにより後天的に壊されてしまった結果、神経の伝達が困難になるという説が現在浸透しています。
一方で、遺伝的な原因を明らかにする研究にも取り組まれています。

特発性過眠症との違い

日中に眠くなる病気として、ナルコレプシーの他に特発性過眠症という病名を耳にしたことはないでしょうか。
病名から連想してもナルコレプシーと似ているようですが、この2つの病気には明確な違いがあります。

昼間に眠くなるときの特徴として、特発性過眠症は一度眠くなると数時間症状が続くのですが、ナルコレプシーはせいぜい5分~20分程度の短時間です。
ナルコレプシーは強烈な眠気に襲われますが、特発性過眠症は少し眠いといったレベルです。

ナルコレプシーは眠気が覚めたあとはスッキリとしますが、特発性過眠症はぼんやりしたままです。
ナルコレプシーは夜中によく目が覚めてしまいますが、特発性過眠症はそのようなことはありません。
可能性のある合併症として、ナルコレプシーは糖尿病・多汗・肥満などがあります。
特発性過眠症は末梢血管障害・めまい・頭痛などといった自律神経症状を併発する患者さんが大勢います。

精神賦活剤がナルコレプシーは効果を発揮しますが、特発性過眠症に用いても効かないことが少なくありません。
HLA-DR2/DR15に対し、日本人のナルコレプシーの患者さんは全員が陽性となります。
精神賦活剤の患者さんは、健康な方の結果とほぼ変わりません。

ナルコレプシーが回復するまでの期間

ナルコレプシーは10代の方が多く発症する病気ですが、かかっていない方であってもこの年代は眠くなりがちだといえます。
5~10年も経過すれば、症状の改善を実感できる方が大勢います。
治療を10年近く継続することで、10%近い患者さんは眠気の症状が大幅に改善。
40%近い方は睡眠麻痺が、30%近い方は眠るときに見る幻覚の症状が、20%近い方は情動脱力発作が治療薬なしでも過ごせるレベルにまで改善します。

そもそもナルコレプシーの病名の意味とは

過眠症の一種として代表的なナルコレプシーは、別名居眠り病ともいわれています。
Narcolepsyと表記しますが、ギリシャ語で脱力や麻痺を意味するnarco(ナルコ)と、発作を意味するlepsy(レプシー)からフランスのお医者さんによって命名されました。
このお医者さんは、ナルコは脱力や麻痺ではなく「眠り」として病名に取り入れたと伝えられています。

これらからナルコレプシーを直訳すると脱力発作を示す病名になってしまい、激しい睡眠発作を意味していません。
ただ、1880年に名付けられてから現在に至るまでナルコレプシーという病名がテレビや新聞などでも普及しており、世界中に浸透しています。

日常生活の改善でできる治療法

まだ軽度のナルコレプシーの方でしたら、日常生活の改善を行うだけで十分に回復できる可能性があります。
とはいえ、まだ回復に取り組んでいる期間中も完治しているわけではありません。
ご自身の生活リズムの中で睡眠発作が来るタイミングにはできる限り危険性のある作業を行わないこと、車の運転などはしないことが大切です。

以下の3つを実践してみてください。

  • 短い時間の昼寝をすること。都合が付けられるようでしたらプランを立てて、数時間ごとに昼寝をするのが理想的
  • 規則正しい生活習慣を送れるよう調整していき、夜はしっかり睡眠を取ること
  • コーヒーなどのカフェインは、必要性があるときには飲んでも構わない

原因が明確にされていないナルコレプシーは、根治療法がないことから、規則正しい生活習慣を身に着けることや薬物療法で根気よく取り組むことが基本となります。
昼寝をするおすすめの時間帯は、お昼の休憩時間や学校から帰宅したあとの夕方などです。
昼寝にようする時間は短くて十分で、1日に1~2回。
仕事をされている方はなかなか難しいのが現状でしょうが、ナルコレプシーに限らず働く人一人ひとりの抱える病気に対し、職場の理解が今後お互いに進んでいくことを望みます。

病院での薬物療法

医療機関でナルコレプシーの治療を受ける場合、以下のような薬物療法が行われます。
薬物療法をするだけでなく、崩れている生活習慣の改善にも並行して取り組むことが重要です。
薬の力だけでナルコレプシーは治せないというくらいの意識で日常生活も整えていけば、治療の結果をスムーズに実感できるでしょう。

夜眠れるようになる治療薬

昼間に何度も眠くなるナルコレプシーは、夜中に十分な睡眠ができていないことで症状が進行する患者さんが大勢います。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬が投与されることにより、夜中に何度も目が覚めず、深い眠りを得られるようにしていきます。

抗うつ薬

抗うつ薬が処方されるのは、睡眠麻痺や就寝時に幻覚を見る症状、情動脱力発作意などの症状がある患者さんに対してです。
治療薬の種類はSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(セロトニンーノルアドレナリン再取り込み阻害薬)、三環系抗うつ薬などがあります。

睡眠発作を抑制する薬剤

ナルコレプシーで昼間の眠気に悩まされている患者さんに処方されるのが、中枢神経刺激薬です。
中枢神経刺激薬には第一選択薬として、モディオダール(モダフィニル)が選ばれています。
モディオダールは1日1回、朝に飲むだけで長時間の効果が得られます。

モディオダールが選ばれているのは、睡眠発作への効能だけでなく副作用の影響にも配慮されているからです。
ナルコレプシーの睡眠発作の治療薬には他にもベタナミン(ペモリン)やリタリン(メチルフェニデート)がありますが、複数の副作用が明らかになっています。
乱用することになったり、薬に患者さんが依存しなければならなくなるなどの問題が指摘されている薬です。
ベタナミンやリタリンも使用されないわけではありませんが、特に病状が重い場合となります。

病気の自覚で改善できる

退屈な会議や授業など、誰でも睡魔に襲われる時間というものはありますが、このときナルコレプシーの患者さんはさらに強烈な眠気が生じています。
プランを立てて仮眠を取るなど生活習慣の中で昼間に眠くならない工夫を行うことや、薬物療法を受けることで、ナルコレプシーの悩みは軽減させることが可能です。

昼間に眠くて仕方がないという症状は、サボり癖がある人、怠け者などのレッテルを貼られやすいですし、当の本人ですらそうだと信じ込んでいるケースも少なくありません。
病気だと自覚できれば、生活習慣から改善させることや医療機関で専門医の治療を適切に受けることができます。
交通事故や、就労意識が低いなどの理由による解雇などの重大な問題を回避させるために、できることから始めていきましょう。

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