盲腸(もうちょう)とは病気の正式名称ではありませんが、この名前を聞くと大体の人が症状をイメージできるほど、一般的に広く知られている病気です。
ですが、多く知られているからといっても自分で治癒できるような簡単な病気ではありません。
手術で治療をすることが非常に多く、放置してしまうと深刻な症状にも繋がります。
今では病院によっては傷や術後の痛みが少ない手術方法もありますので、痛みが激しい時には病院で盲腸ではないか診てもらいましょう。

症状は急激な腹痛

正式な病名は虫垂(ちゅうすい)炎、もしくは急性虫垂炎といいます。
盲腸とは腸の一部分の名前です。
小腸から大腸になった直後の部分が盲腸で、その先に7センチ位の小さな袋があり、そこを虫垂と言います。


引用元: 板橋中央総合病院(http://www.ims-itabashi.jp/laparo/index.html)

この虫垂が炎症を起こしているのが虫垂炎です。
実は盲腸という場所が痛んでいるわけではありません。
昔、盲腸が痛んでいると思われていたことから、盲腸と呼ばれているという説があります。

典型的な症状には段階がある

最初は食欲の低下から始まります。
次にお腹の上やおへそ周りが痛みますが、痛みが出ずに吐き気だけの場合もあります。
時間が経つと次第にお腹の右下部分が痛くなります。
その後吐き気がなかった場合に吐き気が出て、37℃位の微熱も発生します。

もし虫垂炎でお腹全体が痛んでいる場合、虫垂が破れてしまってお腹の部分が炎症する腹膜炎というのを起こしている可能性があります。
これはかなり進行してしまっている状態です。
4歳までの盲腸になった子供は、約7割がこの状態に発展すると言われています。

痛みが発生すると1日のうちに急激に痛みが変化するのが特徴です。
昨日までなんともなかったのに、強い痛みがいきなり出てきた時は病院で診てもらいましょう。

発症は子供から10代までに多い

2、3歳位から発症することがありますがその年齢での発症は少なく、年代別でもっとも多いのは10代です。
ですが子供のみの病気ではなく、その他の年代も発生します。


引用元: まつもと医療センター 松本病院(http://mmcmatsu.jp/index.html)

また生きているうちに虫垂炎になる確率は、7%程とされています。

炎症の原因は感染

弱まった虫垂に細菌やウイルスが感染して炎症が起こりますが、なぜ普段感染しない部分が感染してしまうのかはハッキリと特定されていません。
そのため予防は難しい病気になります。

ですが、体が弱まっている時には感染しやすくなってしまうので、ストレスや疲労・生活習慣に気をつけることが予防につながると言われています。

改善する市販薬はない

胃痛の薬や整腸剤などは胃腸の動きを整える薬ですので、それらの市販薬は虫垂炎には効果がありません。
薬で治った場合は、それは虫垂炎ではなくて別の原因の痛みだったということになります。

間違えやすい病気

症状が似ているために間違えやすい病気があります。
虫垂炎と同じような痛みだけど場所が違う、という時は大腸憩室(けいしつ)炎の可能性があります。

大腸憩室炎

大腸の壁に袋が出来て、炎症を起こしたり膿(うみ)が溜まったりします。
こちらはほとんどが手術なしで回復し、細菌やウイルスに効く抗生物質という薬で治療することが多い病気です。

女性特有の炎症

卵巣や卵管の炎症という、女性特有の臓器の病気とも間違われやすいです。
痛くなる部位は同じ病気です。
抗生物質で治療が終わることも、手術を行うこともあります。

病院の診察方法と誤診

診療科については、症状を考えると最初は内科に行くべきですが、最終的に外科になることが多いです。
そのため症状的に虫垂炎かもしれない、と感じたら外科で診てもらっても良いです。

検査方法

超音波やCTという画像検査で、虫垂がはれているかを確認する検査方法が多いです。
他にも血液検査で白血球数、炎症がある時に増える物質が多くないかを調べる方法もありますが、血液検査は高齢者の場合は、反応が出にくいです。

誤診が多い虫垂炎

実は虫垂炎はとてもわかりにくいため、誤診が多い病気なのです。
誤診と聞くと怖くなってしまう方も多いですが、虫垂炎の場合はお医者さんが悪いというより病気の特性的に誤診となりやすいのです。

語弊があるかもしれませんが、誤診には「ある程度仕方がない誤診」と「言い訳の出来ない誤診」があります。
「ある程度仕方がない誤診」は、①十分な医療面接を行った上で、②(それぞれの状況の中で)必要十分な検査が行われ、③診察の段階で考えうる診断名を患者(あるいはその家族)に丁寧に説明され、④十分な同意が得られており、⑤後から他の医師が検証してもやむを得ないものです。
出典 藤田保健衛生大学救急総合内科( http://fhugim.com/)

お医者さんが典型的な症状をしっかり把握しているけれども、診察時に患者から正確な痛みの状況が伝わらないことが多いのです。
強烈な痛みがあって病院に行った時に、最初はお腹の上の方が痛かったのに急に右下に痛みが移動した…と1日の変化を覚えている余裕がありません。
痛みだけではなく、画像検査をしても隠れていて見えないことがあります。

誤診が多いのは患者のため

実は誤診であっても、手術をするほうが良いという話があります。

誤診とは虫垂炎ではないのに虫垂炎として診断をしてしまったものと、虫垂炎なのに見逃してしまったものと両方があります。

そこで優秀な外科医の虫垂炎の正診率(虫垂炎と診断して手術したら本当に虫垂炎であった確率)はどれくらいなのか?というものです。

一般の方は100%とお答えになるかもしれませんが、答えは80−85%と言われていました。これは診断技術が進歩した現在でも一定の誤診率が必要と考えられています。

なぜ間違う方が良いのかというと、本当の虫垂炎しか手術したことのない外科医は必ずたくさんの虫垂炎を見逃しているからだと言われています。

虫垂炎でない虫垂を切ってしまってもちょっとした傷が残るだけで済みますが、虫垂炎を見逃すと最悪命に関わることもあります。

それだけ虫垂炎は怖い病気なので、診断がはっきりするまで手術をためらうのが最善の策ではないという先の医師達のいましめが込められているのだと思います。
出典 JOH&PARTNERS(http://joh-partners.com/)

患者のことを考えると慎重になりすぎるのは危険なため誤診率が高くなっており、それだけ進行すると重症になるのが虫垂炎です。

治療方法は手術がメイン

治療方法は抗生物質で治すか、手術をすることになります。
炎症を起こす虫垂自体がなくなるので、手術をすると再発はせず完治となります。
そのため抗生物質で治る程度でも、手術で虫垂を切ることを望む方もいます。

抗生物質だけで治るのはどんな時か

虫垂炎を手術せずに治療することを、薬で散らすとも言います。
過去に手術をしたことがない人は、できれば薬で散らしたいという方も多いと思います。

初期の段階では抗生物質のみで治療をすることもありますが、虫垂炎と診断がついたら基本的には手術となります。
盲腸=手術というイメージが強いのは、かなり初期の段階でないと抗生物質のみで治療出来ないためです。

また今は抗生物質で治すか手術するかという2択のみではなく、まず抗生物質である程度症状を抑えてから手術を行う場合が多くなってきました。

入院期間はどのくらい?

手術時だけでなく、抗生物質で治療する場合も食事をとらないように入院することもあります。
通常は一週間前後の入院で、発見が遅くなり腹膜炎まで発症していると更に長くなります。
また現在では入院期間なしに手術できる場合もあります。

日々進化する手術方法

基本的な手術はお腹を開ける開腹手術という方法です。
開腹での虫垂炎の切除は外科になった医者の多くが初めて経験する手術というほど、手術の中での難易度は低いものです。

最新の方法では単孔式腹腔鏡下(たんこうしきふっくうきょうか)虫垂炎手術というので、これは難易度が高い方法ではあるものの、傷がほとんど残らずに済む手術方法です。

腹腔鏡手術とはお腹を切るのではなく、いくつかの穴を開け、そこから機械を入れてカメラで確認しながら行う手術です。
この腹腔鏡手術が更に進化し、お腹に開ける穴が1つで済むようになったのが単孔式腹腔鏡下虫垂炎手術です。


引用元: 笛吹中央病院(http://www.fch.or.jp/)

術後に注意することは

基本的に傷が塞がれば通常通りの生活で大丈夫ですが、手術方法によっても期間は異なるため、担当のお医者さんに確認するようにしましょう。
通常の開腹手術では1週間程となっており、その間アルコールと運動は避けた方がよいです。

虫垂はなくても大丈夫?

虫垂切除を行うことで体に影響があるかは、研究されているもののハッキリとした結論は出ていません。
それほど日常には影響がないということです。

虫垂を全て切除しても困ることはないのでしょうか?

日常生活において後遺症となることはまずありません。
たしかに、虫垂も人体において何らかの役割があるという報告もありますが、炎症を繰り返しうる臓器を切除することは多くの状況で十分なメリットがあります。
出典 東京外科クリニック(https://www.tokyogeka.com/sp/)

手術をしたくない時には手術方法を選ぼう

よく聞く病名ですが、発見が遅れると大変な事態になる病気です。
手術が嫌なので薬だけで治療したいと思う方と思う方もいるかもしれませんが、初期でないと薬だけで治すことは難しいです。
腹腔鏡手術をしている病院で診てもらい、我慢せず早めに行くようにしましょう。

スポンサードリンク

スポンサードリンク