眠っている本人は気づいていなくても、呼吸が止まっていたり、そうかと思えば大きないびきをかいているということはないでしょうか。
もしそうなら、睡眠時無呼吸症候群(SAS)かもしれません。

呼吸をしていなければ脳などの重要な場所に十分な酸素が行き届かなくなりますし、別の病気の発症原因になる場合もあります。
睡眠時無呼吸症候群かどうか手軽に知るためのチェック方法や医療機関で行われる検査、原因や症状、治療法、日常生活で簡単に始められる予防方法などについてご紹介します。
10秒以上寝ている間に呼吸が止まっている方は無呼吸状態といえますので、ぜひこの病気についてもっと知ってください。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは

睡眠時無呼吸症候群はSASともいわれ、英語のSleep Apnea Syndromeの頭文字を略してこう呼ばれています。
就寝中に家族などが様子を見ていると呼吸が止まっていることがあるのですが、本人は自覚症状がありません。
患者さんの傾向として、男性に多いのが特徴的です。
女性も例外ではなく、更年期以降に患者さんが増えていきますので注意が必要です。

呼吸がしっかり行われていないことにより十分な酸素が体内に取り込まれなくなれば、極度の酸欠状態におちいります。
就寝中に息をしていないという原因から死亡することはほとんどないのですが、極端な低酸素状態が続けば病気を引き起こすことにつながりかねません。

酸素濃度の低下

血液内の酸素濃度は、SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)で計測されます。
SpO2は起きているときなら96%を超えるのが一般的なのですが、90%を下回ると問題です。
酸素濃度が低いために、体内のさまざまな臓器に酸素がしっかり届けられないという状況に陥るからです。

呼吸をしていない状態は起床時と睡眠中とでは決して同じではなく、1分間健康な人が起きている状態で呼吸を止めたところで、何%の数値しか下がりません。
しかし、睡眠時無呼吸症候群の患者さんが寝ている最中に息が止まってしまうと、容易に90%を切る数値まで低下してしまうのです。
睡眠時無呼吸症候群の患者さんであっても、寝ているに呼吸が再開されればSpO2が90%以上に回復します。
とはいえ無呼吸状態が一晩に何回も繰り返されれば、血管や心臓、自律神経系などに負担がかかってしまいます。

こうした仕組みから睡眠時無呼吸症候群の患者さんは重篤な疾病(脳卒中や心筋梗塞など)の発症リスクが、健康な方に比べて2~4倍高くなるのです。
他にも、不整脈を引き起こしやすくなったり、生活習慣病(糖尿病や高血圧など)にかかりやすくなります。

2種類ある睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群という言葉はテレビの健康番組などで耳にすることがありますが、実は中枢性と閉塞性の2種類あるということをご存知でしょうか。

  • 中枢性睡眠時無呼吸症候群 ── 英語ではCentralSleepApneaSyndrome(CSAS)。
    いびきの症状があまり現れないタイプです。
    脳卒中や心不全などの疾患を経験している方が、発症しやすい傾向が見受けられます。
    呼吸中枢に異常が発症したために、息をするという指令が発せられないことが原因で呼吸が止まってしまいます。
  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 ── 英語ではObstructiveSleepApneaSyndrome(OSAS)。
    睡眠時無呼吸症候群の患者さんの90%近くは、病院でこちらと診断されます。
    鼻~喉頭(上気道)のどこかがふさがることにより、呼吸が止まってしまいます。
    閉塞性の患者さんの傾向として、ぽっちゃり型の方が多めです。
    とはいえ、小さな下顎をしている方、咽頭扁桃が増殖して肥大化したアデノイドがある方、スリム体型でも鼻の通りがよくない方なども閉塞性にかかる可能性があります。

睡眠時無呼吸症候群の検査方法

SASかどうかをチェックする検査方法は、複数種類あります。
医療機関で本格的に行う方法と誰でもできる簡易検査方法がありますので、まずは家族などの協力を得て簡単に調べることから始めてみてはいかがでしょう。

自宅で誰でもできる簡易検査方法

睡眠時無呼吸症候群の診断において、睡眠中の1時間以内に何回呼吸が止まっているかをカウントするという検査方法があります。
このとき、低呼吸と無呼吸の2種類の状態をカウントします。
低呼吸は、呼吸をしていないわけではないけれど少ししかできていない状態のことです。
無呼吸は、完全に呼吸が停止した状態が10秒以上続いていることをいいます。

検査では就寝中の1時間のうちに、低呼吸または無呼吸になった回数を無呼吸・低呼吸指数と呼びカウントします。
この指数は英語でApnea-Hypopnea Index(AHI)と呼ばれ、AHIが5回を上回った場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性が考えられます。

簡易型睡眠モニター検査

病院で受ける検査の中には、機械を自宅に持ち込んで行えるものもあります。
簡易型睡眠モニター検査は軽くてコンパクトな機械を装着して行うというもので、操作は必要ですが容易に扱えます。

いびきの音声を録音するマイク、気流を測る温度センサ(サーミスタ)や圧力センサ、血液内の酸素濃度を指先で測れるパルスオキシメータなどを身に着けます。
こうして寝ている間の呼吸がどのようになっているかについて無呼吸状態があるか、気道が狭くなる場合はその度合いなどの機械にデータが記録され解析を行ってもらい検査されます。

PSG(ポリソムノグラフィー)検査

PSG(ポリソムノグラフィー)検査は、簡易型睡眠モニター検査とは別に行うものです。
眼球の動きや筋電図、脳波などを調べることから、呼吸状態と一緒に覚醒反応はあるか、しっかり睡眠が取れているかなどを明らかにします。

PSGは検査で身に着ける機械がたくさんありますので、検査のために入院しなければなりません。
PSG検査もしくは簡易検査で出された数値は、AHI(無呼吸・低呼吸指数)がどのくらい進行しているかが分かります。

重症 ── 30≦AHI
中等症 ── 15≦AHI<30
軽症 ── 5≦AHI<15

睡眠時無呼吸症候群で生じる症状

寝ている最中に無呼吸状態に陥ったあとは再び息をするのですが、その時に起床しなくても脳は覚めてしまいます。
これにより深い眠りが妨げられてしまいますので、どうしても睡眠が浅くなった結果、良質な睡眠を確保することができなくなります。

睡眠時間はたっぷり取っていても、本人は寝ている間に起床した自覚症状がないまま、知らない間に睡眠不足になってしまいます。
十分な睡眠時間が得られていませんので、昼間に疲労感や集中力・記憶力の低下、眠気があるなどの症状が現れます。

朝起きたときに頭痛がしたり、まだ眠り足りないという感覚が残ったり、寝ている間に口呼吸をしているので喉や口が乾きます。
就寝中はトイレに何回も行く、夜中に何回も起きてしまう、寝汗をかく、激しく手足が動く、呼吸が止まる状態といびきをかくことを交互に反復するなどの症状があります。

睡眠時無呼吸症候群になる原因


引用元: 阿蘇医療センター(http://aso-mc.jp/section/other/sas/)

気道と呼ばれる空気が通過する道を、のどちんこ(口蓋垂)や舌によってふさがれることが主な原因です。
ふさがれてしまう原因は、以下の2通りが考えられます。

  • 顎が狭い・小さい ── 生まれつきの骨格で狭い気道をしていることから、ふさがりやすい(スリム体型でも、少し体重が増えただけの要因で睡眠時無呼吸症候群を発症しやすい)
  • 肥満 ── 不要な脂肪が首周辺にあることで、気道がふさがれやすい

睡眠時無呼吸症候群の治療方法

睡眠時無呼吸症候群には、いくつかの治療方法があります。
まだ初期段階の患者さんは治療を行う必要がなく、生活習慣の見直しで治っていきます。
例えば、就寝の際には横向きの姿勢を取ること、禁煙、禁酒、ぽっちゃり体型の方は減量などです。

CPAP(経鼻的気道持続陽圧療法)

CPAPはContinuous Positive Airway Pressureの略で、日本語では経鼻的気道持続陽圧療法といいます。
経鼻的気道持続陽圧療法は、中程度から重症だと診断された患者さんの治療に最も選ばれています。

鼻と口のマスクもしくは鼻のみのマスクを通じて上気道の内部に陽圧をかけ、気道がふさがるのを回避させ、無呼吸状態を防ぎます。
呼吸ができるようになれば、低酸素状態も避けられるという治療法です。
健康保険の適用になるケースとならないケースとがあり、PSG検査の数値がAHI 20を超え、簡易型睡眠モニター検査のAHIが40を超えれば全額実費でなく保険適用内で治療が受けられます。

マウスピース療法

マウスピース療法は、症状がまだ軽い方から中程度の閉塞性睡眠時無呼吸症候群と診断された患者さんが対象です。
専門の歯科医とも連携を取り、前方に下顎を出して舌の後ろ側に空間ができるようなマウスピースを使用することで上気道を拡張し、原因である気道のふさがりを防ぎます。

扁桃摘出術・アデノイド切除術・舌縮小術

小児の患者さんに有効な外科手術として、以下の治療法があります。
扁桃が肥大している患者さんには扁桃摘出術、咽頭扁桃が増え肥大しているアデノイドの患者さんにはアデノイド切除術を行うことによって上気道を広くします。
舌が肥大するなどの症状が確認された患者さんには、舌を小さくする舌縮小術が行うことで上気道を拡げます。

これらの治療方法は小児には効き目がありますが、成人の患者さんの場合効果があったりなかったりします。
成人の患者さんを対象に口蓋垂軟口蓋咽頭形成術と呼ばれる、喉を拡げる手術がありますが、効果は約半数の方しか現れていません。
喉の奥が狭い、のどちんこ(口蓋垂)が長いなどの症状に用いられる手段で、術後しばらくは効果が出ていたとしても、再び無呼吸になるケースが生じています。

睡眠時無呼吸症候群の予防方法

日常生活の中で改善すべきポイントが分かれば、自分で予防していくことができます。

枕の高さの調整

高さが合っていない枕を使用している方は、適切な高さに調整するだけで気道を圧迫しないようにできます。

横向きで就寝する

気道がふさがれることが無呼吸や低呼吸を招きますので、舌が落ち込んで気道をふさぎやすい仰向けより横向きになって寝た方が無呼吸になる頻度を減少させられます。

禁煙する

喫煙者の方は、タバコを吸わない人に比べて喉の炎症が発症しやすい傾向があります。
喉が炎症した患部が気道を狭くしてしまいますし、別の疾患にもつながることから禁煙が推奨されています。

飲酒の時間と量の見直し

アルコールを飲むと舌が沈んで気道のふさがりを招くのですが、それは筋肉の緊張がアルコールによって緩められるからです。
飲酒をした晩に大きないびきをかく方は、就寝前に飲まないようにしたり、量をほどほどにすることで睡眠時無呼吸症候群対策ができます。
理想は、飲酒をやめることです。

減量する

ぽっちゃり体型になると喉や首に脂肪が付着するので、気道がふさがれるリスクが高まります。
呼吸は腹部の周辺についた脂肪によっても邪魔されますので、ダイエットをして脂肪を落とすことが睡眠時無呼吸症候群予防になります。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群だと医師から診察され、さらにぽっちゃり体型の方は、10キロを超えるダイエットを行わなければ無呼吸が治りません。
急激に10キロ以上の減量をするというのは難しいですから、1キロずつ減らしていくことを始めてみてください。

本人が気づけない窒息しかけの状態

上記のチェック項目などを試してみて、もし睡眠時無呼吸症候群の疑いがあると思われるなら、病院で医師や看護師に相談してみてください。
患者さんご本人は自覚することができない病気ですので、ご家族など周囲の方がもし気になる異変があればお互いに指摘して気づくことが大切です。

いびきが大きいから睡眠妨害だという不満があるとき、もしかしたらその方は睡眠時無呼吸症候群という病気が原因で大きないびきをかいている可能性もあります。
息をしていないということは窒息しかけなのだと認識し、生命の危機につながる重篤な疾病の発症を防ぎましょう。

スポンサードリンク

スポンサードリンク