アールエスウイルスという言葉をよく聞くようになり、「インフルエンザの様に危険な病気」と感じ、「かかってしまったらどうしよう…」と不安になってしまう方もいると思います。
ですが、正しい知識をもてばRSウイルス感染症は怖い物ではありません。
そもそもアールエスウイルスとは何なのか、感染するとどのような症状が出るのか、気をつけるべき人はどの様な人なのか、等を紹介していきます。
RSウイルス感染症とは
アールエスウイルスとは呼吸器に感染のするウイルスで、アールエスは英語のRSと表記します。
正式名称をレスピラトリーシンシチアルウイルスといい、このアルファベットを省略してRSといいます。
レスピラトリーシンシチアルとは日本語で呼吸器系、つまり空気の通り道であるのどや肺、それをつなぐ器官のことを指します。
危険なイメージを持っている方もいるかもしれませんが、簡単に言ってしまえば、ほぼ風邪と考えて大丈夫で、成人であればそれほど危険はありません。
ただし、2歳以下の子供には注意が必要です。
RSウイルス感染症の症状とは?
RSウイルスは感染後はすぐに発症せず、一定の潜伏期間(せんぷくきかん)があります。
この潜伏期間とは、感染してから症状が出るまでの期間で、この間には自分が感染しているとわかりません。そのため更に別の人に感染させてしまうこともあります。
流行期間
主には秋から春の初めの寒い時期に流行しやすいですが、年によっても違います。
マスクをしていたり咳等の症状が出ている方が周りで増えてきたら気をつけましょう。
出典:厚生労働省 国立感染症研究所 感染症発生動向調査「感染症週報第38週」(http://www0.nih.go.jp/niid/idsc/idwr/IDWR2013/idwr2013-38.pdf)
発症、潜伏、排出の期間
潜伏期間は大体2日から一週間の間で、個人差はありますが多くの場合は4日から一週間程で症状が出ます。
症状は発症してから4日程かけて悪化していき、発症後1週間程度で症状が良くなっていくケースが多いです。
ウイルスを排出している期間は発症前の4、5日位から治まってからは10日から2週間程となっており、気づかないうちに周りに感染させてしまう可能性が高いです。
主に風邪と同じ症状
軽度であれば発熱や鼻水が現れ、熱の温度は38、9度にまで上がることがあります。
重度になると咳が酷くなってきたり、喘鳴(ぜんめい)が発生したりします。喘鳴とは息を吸ったり吐いたりする時に、「ゼイゼイ」や「ヒューヒュー」といった音が発生することを言います。
呼吸器への感染
細気管支炎(さいきかんしえん)や肺炎等に発展してしまうこともあります。
細気管支炎は肺とくっついている部分の空気の通り道にウイルスが感染する病気で、肺炎は同様に肺の中の細胞にウイルスが感染する病気で、どちらも息をするのが苦しくなり呼吸困難となるものです。
通常、成人であればそれほど危険ではないのですが、細気管支炎は子供であればミルクや水分が飲みにくくなったり、肺炎は高齢者はまれに命の危険もあるため注意が必要です。
子供の肺炎や細気管支炎の半分以上がRSウイルス感染症が原因となっています。
耳への感染
人間の鼻と耳はつながっており、 RSウイルスが鼻を通して耳に感染し、中耳炎となることもあります。2歳未満の子供の場合、中耳炎が併発するのは8割以上となっています。
合併率は2歳未満で85%であり,2歳以上の25%に比べ,有意(P<0.01)に高かった。
出典 RSウイルス感染に伴う小児急性中耳炎の臨床像(https://www.jstage.jst.go.jp/article/shonijibi/33/1/33_17/_pdf)
2歳未満の子供であれば「耳が痛い」と伝えられない場合もあるので様子はしっかりと見ておきましょう。
まだ喋れない子供の場合、耳をよく触っていたり、良く泣く、不機嫌になる等がサインです。
大人と子供の違い
RSウイルスは「かかってしまうと怖い感染病」だと思っている方もいるかもしれませんが、実は生きているうちに何度も感染する感染症です。
大人はRSウイルスに感染しても、通常の風邪と同様でそれほど悪化する事はほとんどありません。ですが2歳以下の場合は症状が酷くなる事があります。
2歳以下だと抗体が不完全
人間の体はかかっている病気に対して、多少であれば自然と強くなっていく様になっています。
RSウイルスに限らず、ウイルスというものは何度か感染し、感染することで体の中で抗体が作られます。
ですが感染していない、もしくは回数を重ねていないうちは、抗体がまだ強くなっておらず、症状が酷くなります。
大体は1歳までに半数以上、2歳以上ではほぼ100%が感染して抗体が強くなっており、症状は風邪程度のもので治まります。
注意すべきは子供
自分の体の中で更に感染していく可能性のあるRSウイルスは、感染で重症化するリスクがある小さい子供は気をつけなければいけません。
例えば下記の様な基礎疾患(きそしっかん)がある子供です。基礎疾患とは、元々持っている病気のことを言います。
- 心臓や肺
- 免疫不全(めんえきふぜん)
- 神経、筋疾患
これの基礎疾患があると、RSウイルスが感染すると症状が重症化したり、免疫が弱いと感染しても体が治せず、症状が改善されないという事態になることがあります。
RSウイルスの感染経路は?
RSウイルスが感染する経路は2種類で、飛沫感染(ひまつかんせん)と接触感染(せっしょくかんせん)です。空気感染はしません。
飛沫感染とは、咳やくしゃみ、会話の際に飛ぶしぶき等です。マスクをすることで予防できます。
接触感染は感染している人の手指に触れたり、もしくは感染している人が触れた物に触れてもなります。例えばドアノブや部屋のスイッチ、机やおもちゃ等です。
RSウイルス感染症が心配な時、検査は必要か
RSウイルスという言葉をニュースや情報番組で耳にして、「もしかしたら自分も…」と心配になり検査を考える人は多いと思います。
実際に、近年RSウイルスの検査をしてほしいと病院で希望する人は増えているというお医者さんもいます。
ですが、大人が感染するRSウイルス感染症というのはただの風邪と考えて大丈夫ですので、敏感になって検査をする必要はありません。
元々体が弱かったり、免疫や呼吸器系の病気を持っている人であれば別ですが、健康な成人であれば病院では熱や咳等の症状に対して、抑える治療を行うのみとなります。
ただ2歳未満の子供であれば、症状が悪化したり中耳炎が併発したりという可能性がありますので、早めに見てもらうのが良いです。
RSウイルス感染症の治療方法とは
RSウイルスには即効性の薬や、予防のワクチンはありません。唯一、 RSウイルスに効く抗ウイルス薬というのはあります。
これもあくまで予防、悪化を防ぐ薬ですので、すでにRSウイルスにかかっている人に対してすぐにウイルスを退治して症状を抑える薬ではありません。
また一般的に販売されている物ではなく、病院で注射として処方する物となっています。
パリビズマブという成分を使用したシナジスという薬品ですが、少々高価であることと、そもそもRSウイルスは2歳未満の子供以外の危険性は低い事から、処方されるのには条件があります。
投与対象患者となっているのは以下の方です。
・在胎期間28週以下の早産で、12カ月齢以下の新生児及び乳児
・在胎期間29~35週の早産で、6カ月齢以下の新生児及び乳児
・過去6カ月以内に気管支肺異形成症の治療を受けた24カ月齢以下の新生児、乳児及び幼児
・24カ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患の新生児、乳児及び幼児
・24ヵ月齢以下の免疫不全を伴う新生児,乳児および幼児
・24ヵ月齢以下のダウン症候群の新生児,乳児および幼児
出典 厚生労働省(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/rs_qa.html)
病院で対処療法(たいしょりょうほう)
病院でRSウイルスに感染されていると言われた場合、治療は対処療法となります。対処療法とは、病気の原因を治療するのではなく、出ている症状を抑える治療方法です。
RSウイルスをやっつける薬というのは今のところないため、咳止めや鼻水を抑える薬を処方するしかありません。
小さい子供が周りにいる場合
2歳未満の子供が周りにいるのであれば、感染させない様に注意しましょう。
特に成人から高齢者は、RSウイルスに感染していることに気づかない事も多いので、近くの成人が感染しない様に注意してあげることが重要です。
飛沫感染対策
咳が出ている時にはしぶきでうつらない様、マスクをするだけでだいぶ感染率が低くなります。
接触感染対策
感染している大人が触ったおもちゃ等を通じて子供にうつる場合もあります。子供の触るおもちゃ、ドアノブ等を消毒しておきましょう。
風邪が流行ってきたら注意を
症状としては風邪とほぼ同じであることを認識していただけたでしょうか。
RSウイルス感染症は危険と怖がることはありません。
ですが潜伏期間に人に感染させてしまう事もあるので、流行ってきた時には自分に症状が出ていなくても、マスクやうがい手洗い、可能であれば消毒をしっかり行いましょう。
またRSウイルス感染症が流行っている時期=風邪が流行っている時ですので、他の様々な病気も危険性があります。しっかりと対策をとって注意しましょう。