2017年11月に声優の鶴ひろみさんが高速道路の運転中に亡くなったニュースを受けて、死因とされる大動脈剥離や大動脈解離という病名が随分と話題になりました。
報道や記事を探してみると、大動脈剥離(はくり)と大動脈解離(かいり)の両方の病名があり、実際にどちらなのかわかりにくい状況になっています。

大動脈は直径が約2~3cmもある太い血管で、突然裂けることで発症します。
一般的な症状は、背中と胸部の間を激しい痛みが何時間も続くというものです。
短時間で病状が進み、治療が間に合わなければ臓器不全や破裂、死亡へとつながる怖い病気です。
前兆なく唐突に発症する病気ですので、異変を感じたら救急車を呼ぶ必要があります。

鶴ひろみさんの命を奪った病気は大動脈剥離と大動脈解離のどちらだったのか、その病気はどんな原因で発症し、どんな症状が現れるものなのか。
治療方法や予防方法なども交えてご紹介していきます。

本当の死因は大動脈剥離・大動脈解離?

声優の鶴ひろみさんといえば、担当していた声はブルマ(ドラゴンボール)やドキンちゃん(それいけ!アンパンマン)、鮎川まどか(きまぐれオレンジ☆ロード)、ペリーヌ(ペリーヌ物語)など数多く、たくさんのキャラクターや作品で愛されてきた方です。
そんな鶴ひろみさんが意識不明の状態で発見された、その後搬送された病院で亡くなったのは2017年11月16日の夜のことです。

まだ57歳という若さだった鶴ひろみさんが発見された場所というのは、首都高速道路状で停車されていた車内でした。
鶴ひろみさんが所属している事務所の青二プロダクションの公式ホームページでは、11月18日付けにて大動脈解離の為永眠いたしましたと発表されています。

所属事務所が大動脈解離という病名で発表していますので、こちらが正解なのでしょう。
病気の情報を調べてみても、大動脈剥離という言い方はあまり一般的ではなく、医学用語にもないとありました。
ニュース記事によっては大動脈剥離が死因だったと載せているところもあるのですが、恐らく大動脈解離のことだと推測します。

大動脈解離を発症した有名人

鶴ひろみさんの他にも、これまでに大動脈解離を発症した有名人は何人もいます。
治療を受けて回復した方には俳優の石原裕次郎さん、タレントの加藤茶さん、タレントの大木凡人さんなどがいます。

残念ながら他界されている方は今回亡くなられた鶴ひろみさんの他に作家の立松和平さん、ミュージシャンの大瀧詠一さん、俳優の塩屋俊さん、俳優の中嶋しゅうさんなどです。
急性大動脈解離の発症には、前兆といえる兆候が特に見られません。
胸部の強烈な痛みなど普段では考えられないほどの激しい異変が生じたら、ガマンしないですぐに電話で119番にかけ、救急車を呼びましょう。
発症から死亡までに達する時間が極端に短いのが、大動脈解離の大きな特徴の一つです。

大動脈解離が発生する大動脈とは

大動脈解離が発症する大動脈とは、心臓から体中にたっぷりの酸素が入った動脈血を送り出す血管のことです。
大動脈を通じて、血液はさまざまな臓器に届けられています。
体中にある血管の中で最も太い血管であり、その直径は胸部大動脈が直径約25~30mm、
腹部大動脈は約20~25mmもあるほどです。

大動脈解離とは

大動脈解離は、なんらかの原因からこの大動脈に亀裂が入ることでその部分から血液が入ってしまい、血管の内側を二層に割き、解離してしまう病気です。

3層ある大動脈が裂けると・・・

そもそも大動脈はしっかりとした弾力性と強さを備えており、内膜・中膜・外膜の3層構造から成り立っています。
亀裂が入るのは内膜で、内膜の1つ外側を覆っている中膜に裂け目から血液が流れ出てしまい、大動脈が避けて大動脈解離を発症します。

解離した場所に解離腔もしくは偽腔(ぎくう)呼ばれる血路が発生して、その中に血液が溜まって瘤(こぶ)ができてしまうと解離性大動脈瘤を発症させます。
外膜の一枚だけですので、破裂するリスクが高い状況といえます。


引用元: MedicalNote(https://medicalnote.jp/)

2タイプあるスタンフォード分類

大動脈は部位によって個別の名称がつけられています。
心臓よりの部位を上行大動脈(じょうこうだいどうみゃく)といいますが、この部分が裂けているかどうかで、命の危険の高さが違ってきます。
上行大動脈が裂けている(解離している)症状はスタンフォードA型、避けていない症状はスタンフォードB型と呼ばれ、この分類のことをスタンフォード分類といいます。

命の危険性があるのは、上行大動脈が解離しているスタンフォードA型です。
血管の破裂や重い合併症を引き起こすケースも少なくありませんので、一刻も早い手術や適切な治療を受けなければなりません。

大動脈解離患者の生存率

大動脈解離を発症したら、生存率はどのくらいなのでしょう。

上記のスタンフォード分類より、上行大動脈が裂けているスタンフォードA型の患者さんは、症状が現れてから1時間以内に1~2%の方が命を落とす可能性があるといわれています。
治療方法には内科療法と外科治療との2種類がありますが、内科療法だけで治療をした場合、1カ月後は約50%の生存率、外科治療は約80%という報告があります。
この数字からも、大動脈解離だと分かったら、いかに緊急手当てや手術が必要かがわかります。

上行大動脈が裂けていないスタンフォードB型はというと、合併症を発症していなければ内科療法と外科治療のいずれでも、1カ月後に亡くなる確率は10%ほどです。
大動脈解離は高血圧の患者さんが多いので、降圧薬によって血圧を低下させるなど、手術を行わない保存治療が行われます。

大動脈解離の発症原因

血管がもろいこと、さらに血管に高い圧力がかかることが大動脈解離の発症にかかわります。
大動脈解離の発症原因として考えられるのは、主に高血圧とマルファン症候群の2つです。

高血圧

血管は、血圧が上昇することで圧力がかかります。
圧力は動脈壁を傷つけるのですが、傷ついても修復されます。
ただ、何度も傷つけられるのと修復作業が繰り返されていれば、次第に血管そのものがもろくなっていくので、大動脈解離が発症しやすい状態になってしまいます。

マルファン症候群

マルファン症候群は誰でもなりうる病気ではなく、遺伝性のものです。
難病であり、細胞同士をつなぎ合わせている結合組織の力が低下するため、大動脈解離の発症リスクが高くなると考えられています。
絶対ではないのですが、マルファン症候群の患者さんには視力が低い・背骨が曲がっている・手や足の指が長くて細い・高身長などの共通点があるといわれています。

大動脈解離患者さんの症状

大動脈解離では、大動脈が裂けることそのものの症状と、合併症を引き起こすことでの症状の2つがあります。

大動脈が裂けたことによる症状

大動脈が裂けたら、突如として背中や胸部に激痛が走ります。
発症したときが最も強い痛みに襲われますが、腹部にある大動脈まで裂けたときは、痛いポイントが段々と下降していくので、腰やお腹も痛くなります。
実際に裂けている部位は腹部などでも、あまりに激しい痛みなので、症状を感じる部分が首~足にまで広がっていきます。

ただ、必ずしも激痛があるかというとそうとは限りません。
痛いはずの背中や胸部すら、なんともないという患者さんも中にはいます。
全く痛みがないからといって安心できませんから、少しでも異変を感じたら専門医に相談した方が安心です。

合併症で起きる症状

大動脈が裂ける部位によって、症状も違ってきます。
下肢虚血症状、腎不全、下血や腹痛の腸管虚血症状、麻痺や意識消失による脳虚血症状、大動脈弁閉鎖不全などです。

偽腔や解離腔で血液に新たな道ができてしまうと、厚みが薄くなってしまった外膜から血液が外へと染み出して破裂し、血胸を発症します。
胃潰瘍、狭心症、腹痛、胸痛、血圧の左右差、頭痛、めまいなどの症状が偽腔や解離腔の発生場所によって現れます。

大動脈が破裂して、心膜腔内出血(心タンポナーデ)や出血性ショックが生じることもあります。

主要臓器につながる分枝血管まで裂けてしまった場合、血流障害が生じてそれぞれの臓器が虚血壊死を引き起こし、腎不全、脳梗塞、心筋梗塞などの合併症で命を落とす危険性もあります。

普段の生活から予防に取り組もう

大動脈解離の発症リスクが高いタイプの方とは、高血圧ぎみの方です。
血圧が高くならない日常生活を送ることが、大動脈解離の予防につながります。

ストレスを溜め込まない

生きていればストレスはつきものですので、完全にストレスがない生活を送るというのはそもそも無理な話でしょう。
病気のリスクを高めないためには、ストレスを受けないことに焦点を絞るのではなく、過度に溜め込まないことが大切です。

膨大なストレスを溜め込んでしまうと交感神経が刺激を受けるため、血圧がアップします。
趣味に没頭できる時間を作ってストレスを発散させたり、睡眠時間を十分に確保したり、規則正しい生活を意識するなどしていきましょう。
ストレスがあることによって過食やアルコールの飲み過ぎ、タバコの本数が増えるなどにもつながりますのでいいことはありません。

熱い湯船に入らない

熱い湯船に入ることを好む人も多いのですが、血圧が高くなったり、心臓に負担がかかるなどの影響がでます。
理想的な温度は、ぬるいと思われるかもしれませんが40度くらいです。

寒い季節の温度差に注意

気候が冷え込むと、血圧が高くなる傾向があります。
部屋の室温は暖房器具で暖かくしていても、脱衣所や浴室、トイレなどは人がいないので冷えていることが多く、移動したときに寒暖差が生じやすくなりますので気を付けてください。
外出するときも寒暖差を作らないよう、手袋やマフラー、マスクの着用をおすすめします。

禁煙で血圧低下

喫煙者の方は、それだけで血圧を上昇させています。
ニコチンの影響から血圧がアップし、血管が収縮され、交感神経が刺激されている状態です。
喫煙生活が長期化すると血管の質がもろくなりますので、そのこと自体が大動脈に直接よくないことです。

アルコールは量が大事

アルコールを飲むこと自体は、血圧にも悪いわけではありません。
一時的にではありますが、血圧を下降させる性質もあります。
ただ、継続的に飲酒していると血圧を上昇させてしまいますから、ほどほどの量を心掛けたいものです。

ほどほどの飲酒量とは、ワインなら200mlくらい(2杯)、日本酒なら180mlくらい(1合)、ビールなら500mlくらい(中瓶で1本)が目安です。

塩分の摂り過ぎに注意

よく血圧に塩分はよくないと聞きますが、それはたくさん摂取した場合に血液の中のナトリウム濃度を高めてしまうためです。
塩分の言い方を変えると塩化ナトリウムですので、ナトリウム濃度が高くなってしまって当たり前です。

身体はナトリウム濃度を低下させようとして、血管内に水分を取り込むことで薄めようとします。
すると、全身を巡っている血液の量が増加することになるので、その結果血圧がアップしてしまうという仕組みです。

そうと頭ではわかっていても、味付けがしっかりついていない食事では食べた気がしないですよね。
食べ応えを実感し満足できる食事は、塩分での味付け以外にも以下の工夫で用意することができます。

  • 食材を購入するときは鮮度の高いものにする
  • だしを使って、うまみで味を補う
  • 味を引き立てるために、香味野菜や香辛料、柑橘類や酢の酸味を生かす
  • 調味料は減塩タイプにする
  • 醤油やソースなどの卓上調味料は、直接かけるのではなくつけて食べる

これらの他にも、以下のことを実践して高血圧対策をしましょう。

  • インスタント食品や加工食品を食べ過ぎないようにする
  • ダシや麺類のスープは飲み干さないで残すようにする
  • 自炊するときは、薄い味付けにする

早めに適切な治療を

大動脈解離は命を奪いかねない怖い病気ですが、発症しても早めに適切な診断と治療を受けることで生存率を高められることも事実です。

スタンフォードA型、B型のいずれであっても、多くの患者さんは以前から高血圧の傾向を持っており、そのことが大動脈解離の発症につながっている原因だと考えられます。
日頃からできる予防を心がけ、もし不安な異変を感じたときには、早めに医師に相談をしてください。

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