消化器(食道・胃・十二指腸・小腸・大腸など)の不調があり、急に激しい腹痛が起きたら腹膜炎にかかったのかもしれません。
腹膜炎には急性腹膜炎や慢性腹膜炎などいろいろありますが、中には早く病院へ行って治療を受けなければならないものもあります。
特に激痛にさいなまれる急性腹膜炎は、別の病気との合併症として発生することが多いものです。
本ページでは腹膜炎について、症状や原因、検査方法、治療法などを取り上げています。
原因や症状などで当てはまるものがあった場合、すぐに治療を受ける必要があるかなど参考になさってみてください。
本当に腹膜炎にかかっているなら、早いうちに治療を受けることで良好に経過が進んでいくことが期待できます。

腹膜炎とは

お腹の内側は、腹膜という膜が貼りついています。

腹膜炎ってどんな病気?

腹膜はいろいろな仕事を持っているのですが、その中の一つにばい菌がお腹の中に侵入したとき、腹水と呼ばれる液体を生成する役割があります。
白血球などが腹水には含有されており、ばい菌からお腹を守ってくれています。
このように大切な働きを持った腹膜がなにかのきっかけで炎症を起こす病気が、腹膜炎です。
腹膜炎を発症すると強烈なお腹の痛みに苦しむことになりますが、治療を受けずに放っておけば生命をおびやかす疾患です。
もしかして腹膜炎かもと疑いを感じたら、医療機関で医師や看護師に相談してください。

腹腔(ふくくう)とは

お腹の中に内臓は腹壁というものが囲んでいるお陰で、臓器が守られている状態です。
腹壁の内側を腹腔といい、腹腔の内部に入っている内蔵器や腹膜の内側をおおっている膜のことを腹膜といいます。
腹膜は半透明をして厚みは薄く、肝臓や胃などをカバーする膜で、広げれば身体の表面と同じくらいの面積があるといわれています。
大きな腹膜がおおっていてくれているからこそ、体内で内臓がねじれたり摩擦を起こすなどの問題が生じることなくすんでいます。
腹膜は健康なときには無菌に保たれていますが、細菌が外部から侵入することで腹膜炎が発症します。

腹膜炎にはさまざまな種類がある

腹膜炎はいくつかの種類に分類され、緊急手術が必要になるものもあります。
分類方法もさまざまで、炎症が起こる範囲によって以下の2種類に分けることができます。

  • 汎発性腹膜炎 ── 炎症がお腹の全体に生じるタイプ
  • 限局性腹膜炎 ── 炎症が部分的に生じるタイプ
    汎発性腹膜炎と限局性腹膜炎とでは、より汎発性腹膜炎の方が重い疾患です。

腹膜に炎症ができる時期によって、慢性腹膜炎と急性腹膜炎などの種類があります。

  • 慢性腹膜炎 ── ほとんどの患者さんは結核菌が原因ですが、中には手術やガンがきっかけでかかるケースもあります。
    徐々に病気が進んでいく性質がありますので、気が付いたときにはかなり悪化していることも珍しくありません。
    倦怠(けんたい)感が全身に生じる、食欲が落ちる、微熱などが主な症状です。
    その他にも腹水、お腹の膨満感などもあります。
    急性腹膜炎のような激痛が起きませんし、症状があっても日常生活を送れるレベルですが、放置して自然治癒する疾患ではないので医療機関で治療を受ける必要があります。
  • 急性腹膜炎 ── 体内に細菌が入り込むことが原因で感染し発症します。
    多くの患者さんは、ひどい腹痛に急に見舞われることで発症が発見されています。
    腹部を圧迫したときに生じる痛みがあり、全体もしくは部分的に痛みます。
    痛みがあまりにも強いことから、ショックが走るほどだと表現する患者さんもいるレベルです。
    初期には継続的に鋭い腹痛があり、患者さんによってはガスがお腹に溜まるケースもあります。
  • 骨盤腹膜炎 ── 急性腹膜炎と似た疾患で、特に症状が現れる部位は下腹部です。
    下腹部の腹痛の他に嘔吐、発熱、吐き気などの症状もあります。
    悪化すると腹水が蓄積して穴が開き、そこから内容物が漏れて出ます。急性腹膜炎の中にも、主に原発性腹膜炎と続発性腹膜炎とがあります。
  • 原発性腹膜炎 ── 腹腔内臓器ではない部分に病巣があって発症するタイプです。
    原発性腹膜炎で代表的なのは特発性細菌性腹膜炎(とくはつせいさいきんせいふくまくえん)で、腹腔ではない病巣にいる細菌が腹膜へと血流に乗って出て感染します。
    原発性腹膜炎にかかる患者さんは、発症前に腹水が蓄積されているタイプの肝硬変や、ネフローゼ症候群にかかっている子供などが発症する病気ですので、発症件数は希少です。
  • 続発性腹膜炎 ── 腹腔内臓器である膵臓(すいぞう)、胆嚢(たんのう)、腸、胃などに病巣がある場合に引き起こされます。
    虫垂炎、胆嚢炎、膵炎などがすでにあり、腹膜にそれらの炎症が及ぶことで腹膜炎を発症させます。
    腸間膜動脈閉塞や腸閉塞、女性の場合は流産や子宮内膜炎、卵巣炎などが原因になるケースもあります。続発性腹膜炎にかかっていて腸や胃が破れると、化膿(かのう)性腹膜炎を引き起こすことも考えられます。
    化膿性腹膜炎は、腹膜にそこに住んでいる細菌などが感染して炎症を発症させる病気です。
  • 胎便性腹膜炎 ── 誕生する前の胎児期になにかの原因によって穿孔し、お腹の中に胎便が漏れることで胎便性腹膜炎を発症します。
    細菌は原因ではなく、胎便に含有する消化液などが化学的な炎症反応から引き起こされます。
    腸捻転(ちょうねんてん)、腸重積、消化管閉鎖または狭窄などさまざまな疾病が発症原因となります。
    胎児が誕生する寸前に腸管の穿孔が生じると、袋状にカバーされたり癒着なしにたくさんの腹水が蓄積する汎発型、漏出した胎便や消化液が腸管や別の臓器で袋のようにつつまれる嚢胞型、腸管と腸管や、腹壁と腸管などの組み合わせてで、癒着(双方が引っ付きあうこと)を起こして一つの塊りになってしまう線維性癒着型で誕生します。
    胎便性腹膜炎の治療は、基本的に手術で行われます。
    お母さんを開腹し、胎便を洗浄して癒着をはがしたり、腸管の穿孔している部位切り離したり、原因である疾患に対応した操作などが行われます。

腹膜炎の発症原因

腹膜炎はいろいろな原因から発症しますが、その中でも多いのが消化管穿孔(せんこう)から引き起こされるものです。
消化管穿孔の消化管とは、口にした食べ物が体内に入って消化吸収しながら移動していく経路の総称です。
具体的には食道や胃、十二指腸、小腸、大腸をトータルで消化管と呼びます。
さらに細かくいうと小腸は回腸と空腸に分類されますし、大腸は直腸と結腸とがありますので、これらも消化管の一部です。
消化管の内のどこかの壁に穴が開いたり、亀裂が生じたり、破損することが原因で、便や食べ物、消化液などが消化管の外部へ漏れだすのが消化管穿孔です。

消化管穿孔以外の腹膜炎にかかる原因は、腹腔内膿瘍、外傷、異所性妊娠破裂や卵巣嚢腫穿孔などの婦人科の病気、膵臓(すいぞう)・胆嚢(たんのう)・急性膵炎や急性胆嚢炎穿孔などの肝臓の疾患などがあります。
原因によって腹膜炎の名称がつけられている種類もあり、特発性細菌性腹膜炎はネフローゼ症候群や肝硬変の患者さんが発症しやすく、がん性腹膜炎は腹膜にがんが広がることが原因で発症するものです。

急性腹膜炎の場合は腹膜炎だけを発症することは珍しく、別の消化器官が病気になったときの合併症として腹膜炎になることが多くあります。
盲腸(急性虫垂炎)の合併症で発症することが多く、盲腸が悪化したために腹膜炎もともなうようになります。
消化器の病気や外傷が原因で穴が消化管にあくと、腹膜へと胆汁や胃液が漏れる場合があります。
女性に限定すると、子宮内膜症、人工妊娠中絶、流産などが原因で急性腹膜炎になる可能性があります。

慢性腹膜炎は高い確率で結核菌から発症し、腹膜からということはあるもののかなり少数です。
結核性胸膜炎や肺結核などに先にかかっていて、結核菌がリンパ管や血液に移動し、腹膜に届いて慢性腹膜炎にかかります。
開腹手術をしたことがきっかけとなり、癒着を起こして慢性腹膜炎に至るケースもあります。

腹膜炎の症状

腹膜炎の種類によって、症状にも違いがあります。
汎用性腹膜炎はお腹全体に激痛が走り、居ても立っても居られないくらいのひどい痛みが生じます。
限局性腹膜炎は、部分的な痛みです。
どちらの場合も症状が継続的にあり、痛みがゼロになるというときがありません
腹部膨満感・嘔吐・吐き気などの症状を併発することもあります。

腹膜炎の検査

腹膜の中に腹水が少しある程度ならばほぼ問題ないといわれていますが、多く蓄積すると不快感やお腹の膨張が生じます。
軽くお腹をたたく打診をして鈍い音が確認されるのは、腹水が蓄積されている証しです。
慢性腹膜炎の患者さんは初期のうちから鈍い音が確認されますが、急性腹膜炎でこの音が確認されるのは後期になってからです。
これらの他にも、腹膜炎には以下の腹部エコー検査・CT(コンピューター断層撮影装置)検査・エックス線検査・血液検査といった検査方法があります。
腹部エコー検査とCT検査は腹水があるかどうかも把握できることから、病名の特定にも役立ちます。

腹部エコー検査(超音波検査)

腹部エコー検査は超音波検査などとも呼ばれ、人間の体に害をもたらさない超音波をお腹にセンサーであて、センサーからの反射を測ることでお腹の様子がわかるというものです。

CT(コンピューター断層撮影装置)検査

CT検査はコンピューター断層撮影装置検査やCTスキャンなどとも呼ばれ、体の断面図を撮れるという方法です。
検査中に痛みが生じる心配はなく、円の筒型をした機器に全身を通しながらエックス線を照射していきます。

エックス線検査(レントゲン検査)

レントゲン検査と呼ばれるものも、エックス線検査と同じものを示しています。
腹部にエックス線あて、影が写っているかにより腹膜炎の進み具合を知ることができます。
エックス線検査はさまざまな検査で取り入れられていますが、腹膜炎の検査では腹部単純エックス線検査が高く評価されています。

血液検査

白血球が増えていることが血液検査で確認されれば、CRPという炎症反応が陽性であると判断されます。
腹膜炎の診断では血液検査が重要視されているのですが、それは原疾患とのかかわりを把握しなければならないためです。

腹膜炎の治療・手術・入院期間

急性腹膜炎で治療を受ける場合、主な治し方は手術になります。
腹膜炎という炎症が生じている部位の臓器を切ったり、穴が開いて腹水が漏出していればその臓器を部分的にふさぐなどの方法をとります。
炎症によって膿がでて蓄積されているなら、手術で膿を排出させます。

入院をして行われる主な内容は、原因を取り除くものと、全身の状態を改善に向かわせるものとなります。
入院期間は患者さんの年齢や発症原因によって違いがありますが、1週~1か月になるケースが多くあります。
多くの患者さんは腹膜炎のみを発症するのではなく合併症で生じるので、かかっている別の疾患の治療も行わなければなりません。
原疾患(もともとある病気のこと)が悪化しているようでしたら、もっと長い入院期間が必要になることも考えられます。
原疾患の種類によっては、手術ができないこともあります。
虫垂炎の合併症で急性腹膜炎にかかったとすると、一緒に虫垂を切り取らなければなりません。

慢性腹膜炎は原因がほぼ結核菌によるため、主に抗結核菌薬が用いられます。
薬物療法が基本ですが、患者さんによってはがんなどの病気を併発していることもあり、その場合は開腹手術が行われる可能性もあります。
いずれの種類の腹膜炎でも、手術を終えたら安静に過ごすことが不可欠で、栄養を点滴で補給するなどしていきます。

治療の開始時期が回復に直結する

特に急性腹膜炎は治療をできるだけ早く、始めることが必要な病気です。
急にお腹が痛くなった、板のように腹部が硬くなった、お腹が張るなどの症状に思い当たるようでしたら、早めに病院へ行きましょう。
手術治療を行うまでどんどん病態が進行していきますから、早めに消化器内科・外科、内科で診てもらうことをおすすめします。
早い段階で治療を始めることができれば、良好に経過が進んでいく疾患です。

スポンサードリンク

スポンサードリンク